1) 教育の下支えとなる心理学
教育の下支えとなる心理学について二つのテーマをもとに研究されてきた。1つ目は,実践においても,答えの導き方など,やり方を重視しがちであるが,どこまで考えられる授業や保育にできるか,という『人はいかに育つ(発達する)か』。そしてもう一つは,研究者として『現場における分析的・複眼的な視点と枠組み』から現場をみることである。教師としての質を高めるには,他者や自己の心理を知ることが重要だという考えをいただいた。
2) 研究者として現場にかかわること
小学校教諭を10年されていた先生は,その後研究者として現場に関わった。幼稚園などの施設だけでなく,その施設を利用する子どもたちの親,つまり家庭に対しても働きかけることで,研究者としての新しい視点を提供していた。養育者や,人の内面についてという他者の心の理解に加えて,自分をどう捉えているかという自己の心についての研究をご自身でデータを取られた。また,その結果を,個と捉える視点として,日常において集団としてしか捉えられない傾向にある現場の先生に提供し,より質の高い教育とはどのようなものかを,一体となって考える事例も紹介された。
これより,現場の視点と,第三者である研究者としての視点を合わせた複眼的な視点で子どもを理解することが重要である。
研究者になるにしても,現場に出るにしても,両立しながら研究をすることはやはり難しい。しかし,どの程度現場に関わり,どのように研究するのかは,テーマの信憑性を裏付けるような工夫をすることで,解決の方向に進んでいく。常にある一つの視点を持ち続け,課題について追求する姿勢こそが重要であることが分かった。現場の立場としては,一般化はできないものの,普遍的な要素は現場で感じるものから得られることがたくさんある。たとえ一般化はできないにしても,要素の抽出によって,納得させられる結論を導き出せるかもしれないという新しい視点を得た。また,研究者の立場では,自分の研究結果をいかに現場に伝えていくか,どう役立たせていくかが重要であり,考えるべき要所であることを理解した。自らのテーマを持ち,研究を行うという経験は必ずどの場面にも活きてくることが分かった。(人間発達専攻 M1大島菜苗)