2016年12月10日,人間発達専攻の髙見和至教授が日本学校メンタルヘルス学会最優秀論文賞(理事長賞)を受賞しました。この賞は,日本学校メンタルヘルス学会の学術研究誌「学校メンタルヘルス」に掲載された論文のうち,特に学術的価値の高い優れた論文に対して授与されるもので,その中でも最も高い評価を受けたものが最優秀論文賞となります。
受賞対象の論文は,日本や世界の初等中等学校教育において早急な問題解決が求められている学校における「いじめ」に関する中学生を対象としたアンケート調査研究です。本論文では,従来の研究で対象となっている「被害者」「加害者」「傍観者」の枠組みだけではなく,いじめを「制止」する行動や,いじめの被害者を「サポート」する行為も調査内容に加えることにより,集団内で複雑かつ流動的な構造を持つ「いじめ」の綿密な現象記述と実態の把握を試みた研究です。約1万名の中学生1-3年生を対象にした結果から,多くの者が「仲間はずれ・無視」や「からかい・悪口」の被害を経験しているが,「金品被害」や「ネットいじめ」の被害経験率は僅かであること,約4割の生徒が傍観だけでなく制止の経験を有していることが明らかになりました。また,いじめる側といじめられる側の入れ替わりが日常的であることや,加害生徒だけでなく被害を受ける生徒も傍観や制止の経験を有していることが分かり,いじめに関する行動の一つを改善することが防止に繋がる可能性が示唆されました。本論文は,これまでのいじめに関する研究に新たな視座と,現場における問題解決の糸口を提供した点が高く評価されました。
受賞対象論文
- 髙見和至(2016),「中学生における“いじめ”に関する行動の諸相―された・した・傍観・制止・サポートの行動頻度と関連―」日本学校メンタルヘルス学会『学校メンタルヘルス』第19巻,第1号,pp. 14-27.