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教員情報(AKIMOTO Shinobu)

氏名・職名 秋元 忍(あきもと しのぶ,AKIMOTO Shinobu)准教授
メールアドレス akimoto [at] kobe-u.ac.jp
取得学位 博士 (体育科学) (筑波大学)
研究分野 体育・スポーツ史
[学部] 所属 人間行動学科 身体行動論コース
研究テーマ

スポーツの未来を展望するには,その過去と現在に関する深い認識が不可欠です。身体・スポーツ文化の過去を新しい視点から解明します。

[大学院] 所属 [博士課程前期課程] 人間発達専攻 からだ系講座
[博士課程後期課程] 人間発達専攻 からだ系講座
[(旧)博士課程前期課程] 人間行動専攻 身体行動論コース
[(旧)博士課程後期課程] 人間行動専攻 身体行動論分野
研究テーマ

19世紀末から20世紀初頭の英国を主たる研究対象として,近代社会におけるスポーツ文化の特質を,歴史学の方法により解明します。

研究者情報 神戸大学研究者紹介(KUID)
教員サイト 教員のウェブサイト
研究室紹介 身体運動の「過去」から「現在」を知り,「未来」を切り拓く

私のゼミでは,身体運動,またそれに関連する多様な人間の営みに関する歴史研究を行っています。ゼミ生たちは,自らの問題意識に基づいて,これは面白い,これは重要だ,と考えたテーマに,喜びや怒りをもって果敢に挑戦しています。中学校のクラブ活動をめぐる諸制度や競技スポーツのルールの変遷を扱った研究から,俳優と台本の関係史,さらには地方競馬の廃止の経緯を検討した論考まで,そのテーマは実に様々です。ただし本ゼミ生に共有されているのは,歴史研究は単なる懐古趣味ではなく,人間がより人間らしくある未来を展望するための実践である,という認識です。過去という比較の対象を提供することを通して,現在の状況をより深く認識すること。さらに一歩踏み込んで,現在の相対化からよりよい未来を切り拓く社会思想を立ち上げること。歴史研究という刺激的な経験を通して,こうした未来形成のための構想力を獲得してもらいたいと願っています。

研究最前線 19世紀後期英国,近代スポーツ誕生の現場に潜り込む

潜り込むしかない。内部から観察するのだ。しかしどうやって? 時代は大きく変わってしまった。現代日本に生きる私と,1860年代英国のあるスポーツクラブに集い,新しいやり方でスポーツを実践してみせた人々。両者の間には埋めがたい溝がある。彼らの志向や選好を認識したい。そこは近代スポーツを誕生せしめた現場の一つであったからだ。だがもはや彼らに会うことはできない。かなわぬ願いなのだろうか。

潜入のカギはロンドンのある文書館にあった。求めれば幸運はまれにやってくる。彼らはクラブの活動記録を残していたのだ。総会議事録,会計帳簿,メンバーリスト,ヴィジターリスト。これらの痕跡を読み込み,事実と事実を慎重に結い合わせていく。だがそれだけでは足りない。彼らの身体の内部となり,その現場を生きるように,出来事を立体的に再構成しなければならない。そのためには他の多くの周辺史料にあたる必要がある。こうして可能な限り近代スポーツ誕生の現場に深く潜り込んでいく。

以上のような作業から,彼らの様々な志向,選好が少しずつ見えてくる。中にはいま,ここを生きる私に違和感をもたらすものもある。例を挙げよう。この先駆的なスポーツクラブに集った彼らに,顔見知り以外の人々に広く門戸を開く発想を確認することはできない。また1860年代および1870年代前半には,活動はクラブ内のみに留まり,他クラブとの対外試合は全く行われていないか,行われたとしても彼らのゲームのルールを受け入れた少数の相手に限定されていた。彼らはそれで満足していたのだ。

歴史は,現代社会の特徴を,時に暴力的なほどに浮かび上がらせることがある。この事例も同様だ。例えば,みんなのスポーツなる発想は決して普遍的なものではなかったのであり,ある特定の時代に発明されたものなのだ,という気づきを導くだろう。スポーツの現在を相対化し,未来を展望するために,今後も過去の現場への潜入を続けたい。