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教員情報(HASEGAWA Ryo)
氏名・職名 |
長谷川 諒(はせがわ りょう,HASEGAWA Ryo)特命講師 |
メールアドレス |
ryohasegawa [at] people.kobe-u.ac.jp |
取得学位 |
博士(教育学)(広島大学) |
研究分野 |
音楽教育学,音楽教育史,音楽教育哲学,サウンドペインティング |
[学部] 所属 |
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研究テーマ |
音楽を教えるとはどういった営みなのか,音楽教育の目的とは何なのか,そもそも音楽とは何か,といったことを,音楽教育哲学研究や具体的な音楽実践に注目しながら研究しています。
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[大学院] 所属 |
[博士課程前期課程] 人間発達専攻 学び系講座
[博士課程#091;博士課程後期課程]
[(旧)博士課程前期課程]
[(旧)博士課程後期課程] |
研究テーマ |
伝統や文化に束縛されない音楽実践の一例としてサウンドペインティングと呼ばれる指揮付きの集団即興演奏に着目し,実践者へのインタビュー調査を行なっています。
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研究者情報 |
神戸大学研究者紹介(KUID) |
教員サイト |
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研究室紹介 |
「ユニバーサルな西洋音楽」を相対化する 〜ローカルな音楽教育への視座
「素晴らしい音楽は時代や国境を越える」という言葉は誰でも耳にしたことがあるでしょう。では,「素晴らしい」を決めるのは誰でしょうか?例えば日本の音楽科の教科書にはベートーヴェンの交響曲が掲載されています。確かに,ベートーヴェンの交響曲は西洋音楽の歴史の中では重要な作品ですが,日本の子ども達にとっても「素晴らしい」かどうか,吟味する視点があってもよいでしょう。
私達は知らないうちに,西洋音楽が誰にとっても学ぶ価値のある「普遍的でユニバーサルな音楽」だと信じてきました。しかし,そろそろ西洋音楽を相対化し,子ども達にとって真に価値のある音楽教育実践を模索しなければなりません。国境を越えて「素晴らしい」とされる音楽に触ることも大切ですが,自分達だけの音楽を主観的に作るような「ローカルな音楽経験」を積み上げることも非常に重要です。音楽教育の意義を根本的に捉え直せるような実践を追求していきましょう。
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研究最前線 |
音楽する人が自身の音楽経験を意味付ける過程を探る 〜質的研究の認識論〜
音楽は世界中のどのような文化にでも存在する,人間によって必要不可欠な営みです。では,ほうっておいても自然に生じる音楽を,あえて公教育の中で取り扱う意味とは何でしょうか?この問いに答えようと,ある人は,「音楽作品に内在する和音や旋律の構造は人間感情に類似する,すなわち音楽は人間感情を学ぶことと同義なので価値がある」,と主張しました。またある人は,「音楽は歴史や文化を内包するので,そこに没入することは社会的な学びとしての意義がある」,と主張しました。これらはいずれもある程度の真実を含んでいそうですが,どちらにも重要な視点が欠けています。それは,音楽を学ぶ学習者の認識です。音楽する人が自身の音楽経験をどのように意味付けているのか,といった学習者の認識のプロセスを明らかにすることは,音楽教育の意義を根本的に捉え直すことに繋がります。音楽作品の構造や音楽の文化的背景といったコンテンツ以上に,学習者の主観的価値判断の具体は今後の音楽教育において重要なファクターになる,と私は考えています。
近年の音楽教育学研究では,学習者の認識の変化や経験の意味付けといった表面化しづらい事項を明らかにする手法として,質的研究の手法がよく用いられます。質的研究では,特定の人にインタビューをしてその対話を文字に起こし,そのテキストデータを分析していくことで,彼らの語りに内在する新たな意味を抽出することができます。音楽教育の意味や意義を,音響構造や文化的背景からではなく音楽する人の語りから論証することができれば,誰もが納得できる音楽教育のモデルを構想することができるのではないでしょうか。現在は,サウンドペインティングと呼ばれる指揮付きの即興演奏に参加している方々を対象に,質的研究の手法で彼らにとっての音楽実践の意味や意義を明らかにしようと研究を進めています。音楽することの意義や音楽を聴くことの価値についてのラディカルな論考を,多くの人と共有できればと思っています。
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