表彰式の様子
2014年9月9日,神戸文化ホールで開催された神戸市社会福祉大会において,カフェ「アゴラ」勤務の吉田収さん(57)が神戸市長から表彰されました。
吉田さんは,2008年4月にカフェ「アゴラ」の初代マスターとなり,首の大手術を経て現在まで神戸大学に勤務しています。「アゴラ」は,学生や教職員のコミュニケーションの場として設置されましたが,障害者の就労や実習の場としても機能することで,さまざまな人々が相互に学びあうユニークな空間を提供しています。吉田さんは,その学びあいの中心として活躍しています。
吉田さんは,神戸市内の養護学校を卒業後,写真術を学ぶ専門学校に通い,青春時代は写真家をめざしていました。それと同時に,大阪のカフェで働きながら接客を学びました。さまざまな経験を積んだ後,六甲道に自分の店をもった時期もありましたが,阪神淡路大震災で打撃を受け廃業に追い込まれました。数年後,水道筋商店街に障害者の福祉作業所としてカフェを再開しましたが,今度は社会福祉制度変革の波に翻弄され,福祉作業所を畳んで神戸大学に勤務することを決断しました。
吉田さんには脳性麻痺という障害があります。身体の麻痺や言語障害に加え,加齢や手術の後遺症などで,できないことが増えてきました。カフェ「アゴラ」では,お客さんも含めて吉田さんのような障害者が生き生きと仕事ができるということに価値を見いだしています。吉田さんの炒れるコーヒーのファンは根強く,これからも支え合う雰囲気をつくるという大きな仕事に取り組んでもらえたらと,吉田さんの周囲の人たちは考えています。
津田 英二(神戸大学大学院人間発達環境学研究科 人間発達専攻 学び系講座)