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研究道場特別講義 報告

「自治体における発達支援のためのシステムづくり ―生まれてから大人になるまで一貫した取り組みを目指して―」報告

講師
中村 順子(草津市発達支援センター前所長)
日時
平成27年5月28日(木)10:40~12:10
会場
発達科学部 B202(B棟2階)
報告
本講演では,自治体における発達支援のためのシステムづくりとして,滋賀県草津市の発達支援センターで行われている取り組みについて報告された。草津市立発達支援センターでは,乳幼児期から成人期までの障害及び障害の疑いのある方々への支援を実施している。その実施内容としては,大まかに,療育を行う通所支援(湖の子園)と来所や訪問により相談を行う地域支援(相談支援グループ)の2点がある。また,それぞれの発達段階に応じて行われている支援は,子どもから大人までの必要な時期に必要な支援を受けられるだけでなく,途切れることなく継続的な支援を可能なものとしている。地域療育という施策としてこのシステムは,県と市町が協力し合うような形で事業展開をするという特徴だけでなく,保護者の粘り強い市への働きかけによりこの施策の実現につながった点も非常に印象深く感じた。さらに,発達段階に応じた支援の具体例の報告から,このシステムは子どもの発達を重要視するだけでなく,その先にいる保護者も同時に支援を行っており,非常に意義のあるものであり今後さらに注目すべき取り組みであると感じた。職員の皆さんが発達を踏まえて創作した「手づくりおもちゃ」が印象的でした。(人間発達専攻 M1 下木なつみ)

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「教育工学研究からの大学教育へのアプローチ:大学授業における教員・受講生の行動の可視化」報告

講師
村上 正行(京都外国語大学マルチメディア教育研究センター教授)
日時
平成27年6月2日(火)15:10~16:40
会場
発達科学部 A552(A棟5階)
報告
本講義では,教育工学研究からの大学教育へのアプローチの先端的取り組みについて,特にデータ収集および解析の手法を中心とした紹介が行われた。講義の具体的な内容としては,センサリングや画像処理を用いることで,ビデオデータから被験者の態度,気分といった感覚的にしか測りにくいものの指標となる数量的なデータを得られることや,従来個人毎に大量のセンサーを用意しなければ得られなかったようなデータを収集,解析可能とすることで得られる効果,例えばFDのための授業分析に関して事例を用いながら詳細に解説をしていただいた。筆者の取り組む聴覚障害者への情報支援技術開発研究では,その技術の評価において主観的なデータに頼らざるを得ないことが多い。また,聴覚障害者から感想や意見を聞く際に,手話などの翻訳を通すことでデータの損失が起こる。こういった問題に対し,客観的なデータを収集するための1つの良い手法について学ぶことができ,大変意義深い講義であった。(人間発達専攻 D1 江草遼平)

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「青年期の自立と自治を支える教育実践とは-トキワ・アクトの事例を通じて考える-」報告

講師
友井基浩(神戸常盤女子高校教諭)
久保雅之(神戸常盤女子高校教諭)
日時
平成27年7月7日(火)17:00~19:00
会場
発達科学部 大会議室(A棟2階)
報告
本講演では,青年期の発達保障をテーマとして神戸常盤女子高等学校で行われている「トキワアクト」の取り組みについて報告された。常盤女子高等学校のキャリアコースでは,生徒たちの自立や自治を支える教育実践として,主に2つの取り組みが行われている。1つ目は農業体験で,生徒が実際に畑を耕すところから始まり,草抜きや水やりなどの手入れを行い,収穫をする。またそこで収穫された野菜や果物は,文化祭の模擬店に出店し,農業の一連の流れを体験する。もう1つは福祉活動で,高齢者施設の訪問などを通して,高齢者介護の理解を深めるために体験実習が行われている。どの活動においても,生徒たちの勤労観・職業観を醸成することをねらいとされている。
実践報告では,生徒が色々な世代の人々と関わり,生徒自身が変わっていくというお話がとても印象深かった。農業体験をするまでは,人前で話すことが苦手だった生徒が,積極的に人を引っぱっていくような立場になったりするなど,一人ひとりが活動を通して,自信をつけていくことができたのだと思った。常盤女子高校の先生方は,生徒たちが活動を通して周りの人と関わることで,その活動が自身のためだけでなく,人の役にも立っているということが分かり,自己肯定感が高まっていったのだとおっしゃられていた。「トキワアクト」の活動の中で,周りと協力して何かをを成し遂げたという経験は,生徒たちの自己肯定感を高めると同時に,彼らがこれから働いていくための自信にもつながっていると思った。(人間発達専攻 M1 坂本亜津佐)

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「市町村における教育委員(会)の役割と活動」報告

講師
滝内秀昭(前伊丹市教育委員会教育委員長)
川畑徹朗(伊丹市教育委員会教育委員)
日時
平成27年7月9日(木)10:40~12:10
会場
発達科学部 B202(B棟2階)
報告
前期科目「教育政策」の一環として,伊丹市教育委員会の前教育委員長・滝内様と現教育委員・川畑様をお招きし,兵庫県伊丹市教育委員(会)の役割と活動についてご報告いただいた。報告内容としては,(1)教育委員の経緯,(2)教育委員会の仕組み,(3)伊丹市の教育の特徴,(4)様々なアクターとの関係,(5)新教育制度の意義と課題の5つのカテゴリーに分けられ,科目担当の渡部教授を司会役に対談形式で進められた。
印象的だったのが,伊丹市では中学校区を単位に「教育委員と話そう」という取り組みが地道に展開されており,教育委員が「教育熟議ファシリテーター」(小川正人2015/坪井・渡部編『地方教育行政法の改定と教育ガバナンス』三学出版,収録)の役割を発揮していることであった。教育委員会制度が新しくなったことによる影響については,(期間が経っていないこともあってまだ実感があまりないそうだが,)教育長が教育委員会会議の議長役を担うこと,首長との総合教育会議などが紹介された。教育長が議長役担うことに関しては,都合の良いことだけを議題として挙げるのではないかというシステム上のデメリットが一般的には危惧されるが,伊丹市の場合はそうしたことはなく,スムーズに進行しているという。総合教育会議に関しても,新制度になってことで首長と直接会う機会が増えるだけでなく,重要テーマについて委員同士で話す契機にもなっているようであった。
なお,伊丹市においても住民の意識や所得の違いなどによる「教育格差」らしきものが存在しており,懸念される問題として言及された。こうした課題について,教員や学校だけに任せるのではなく,SSWや保護者・地域住民等と連携し「チームとして協働する必要性」を学ぶことができた。「教育格差」を公教育で小さくするように,教育委員会が率先して働きかけることは,子どもたちだけでなく,学校や地域においても非常に意義のあることだと感じた。(人間発達専攻 M1 下木なつみ)

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「ピクトグラムの認知心理学」報告

講師
北神 慎司(名古屋大学大学院環境学研究科准教授)
日時
平成27年7月13日(月)17:00~18:30
会場
発達科学部 A303(A棟3階)
報告
本講義では,認知心理学の観点からピクトグラムの概要について,またピクトグラムのデザインと文化的背景との関わりについてのリサーチや,ピクトグラムを利用したコミュニケーション媒介の開発研究などのお話を伺った。講義の具体的な内容では,トイレの男女を区別するピクトグラムに関して,日本人がまず色から認識しているということ,米国では一部の例外を除いて形で認識しているということを,実験結果や文化的背景から解説して頂いた。また,ピクトグラムの開発にあたっては十分にその文化や問題に関する理解が必要であることを,事例をもって説明して頂いた。コミュニケーションボードの開発については,多くの人に容易に理解でき,特定言語に依存しないピクトグラムの利点を活かした取り組みとして紹介していただいた。筆者の取り組んでいる聴覚障害者への情報保障研究では,音声に頼らないコミュニケーションについて,ICT機器を用いることで文字やジェスチャーを媒介とする技術の開発を行っている。本講義は,認知心理学やデザインの観点から自身の研究についての多角的な視座を得ることができる,非常に有意義なものであった。(人間発達専攻 D1 江草遼平)

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「自閉症スペクトラム児の発達と教育的指導 -学童期に焦点を当てて-」報告

講師
別府哲(岐阜大学教育学部教授)
日時
平成27年7月21日(火)13:20~15:20
会場
発達科学部 大会議室(A棟2階)
報告
本講演では,自閉症スペクトラム(ASD)児の発達と教育的指導について,学童期に焦点をあてて,以下の内容について講じられた。
(1)ASD児は,直観的理解に困難があるものの,命題的理解の発達に伴い,言語化して教えられることで分かり,落ち着いてくる。(2)ただし,命題的理解が発達しても,独自のルールによって他者と関わることがあるため,新たなトラブルが発生することもある。(3)また,過去の他者の行動について自分で理解しなおし,そのことがいわゆる「タイムスリップ現象」を誘発し,周囲の者からすると理解が難しいトラブルに結びつくことがある。本人も,過去の記憶が自分を苦しめることを理解できるので,そのことが深刻な悩みとなることがある。(4)障害のない子どもたちにおいて,自分の思いを丁寧に聴いてもらえて,初めて他者の思いを知りたくなるという事例が多数報告されており,これは発達障害がある子どもも同様である。その子ども独特の表現や感覚を理解して,思いを分かり合う通路を広げていくことが重要である。(5)お互いに苛立ちやルール破りを理解し,しかし全面的に受け入れるのではなく,それを相手にも理解できるように注意したり,支えたりしていく集団づくりが重要である。(6)子どもに共感的な自己肯定感を育てるためには,大人にも自己肯定感を実感できる仲間と生活が必要である。自己肯定感は,他者とつながり他者を信頼できてこそ形成される。
以上を通じて,ASD児研究の最新の知見を学ぶと同時に,定型発達の子どもたちの指導にも重要な示唆を得ることができた。(川地亜弥子)

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「発達を記述することと語ること─発達研究と実践をつなぐ『真実』と『方法』─」報告

講師
中村隆一(立命館大学教授)
日時
平成27年7月29日(水)15:00~17:00
会場
発達科学部 大会議室(A棟2階)
報告
本講義では,発達保障の実践を進めるために,発達理解の方法論として何に留意するべきなのかについて,発達臨床の現場で発達研究を進めてきた中村隆一氏にお話ししていただいた。
心という可視化しにくい現象を検討するために,心理学では「仮説構成概念」が用いられてきた。それにより研究は前進してきたが,発達という現象を記述する際,概念によって現象を規定することと,その状態が変化することを両立させて説明するという難問に直面する。こうした問題を克服するものとして,田中昌人による「可逆操作の高次化における階層-段階理論」における「可逆操作」の提案があったと中村氏はされる。外界を変えると同時に自己も変えるという二重の生産規制を有する可逆操作という概念の導入が,質的な転換を含む発達という現象を記述するのに有効である理論的な説明を聞くことができた。障害のある方の発達診断や実践場面を取り上げるなど,具体的な場面や映像を通してお話いただいたことは,抽象度の高い理論的説明を具体化して理解する大変有意義な機会となった。
発達研究を保育・教育とどのように接続させるのかは,発達研究や発達支援を進める上で重要な課題である。本講義は,発達をどのようにとらえて記述するか,そしてそこに発達研究がどのように寄与するかをとらえ直すことができた。(人間発達専攻 D1 大塚穂波)

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「タブレット端末を用いたデジタル科学絵本の基盤開発と情報の可視化,共有」報告

講師
舟生 日出男(創価大学教育学部教授)
日時
平成27年8月4日(木)15:10~16:30
会場
発達科学部 A427(A棟4階)
報告
本講義では,デジタル科学絵本をデジタル・科学・絵本の3つカテゴリーに分けて考察し,デジタル科学絵本の基盤開発システム(タブレットPC用ポインティング型注釈システム,集散型学習活動支援システム)を体験した。具体的には,以下のように認識できた。(1)タブレット端末の画面に表示されたピン打ちメタファーを用いることにより,着眼点の可視化・共有ができる。(2)タブレット端末を越えたラベルの移動により,活発な意見交換や意見の共有ができる。
筆者はフランスの国際学校において,デジタル教材を用いた反転授業に取り組んできた。本講演を通して,デジタル教材への可能性を再認識できたとともに,デジタル教材の作成や活用の仕方に関して新たな知見を得ることができた。(人間発達専攻 M2 大黒仁裕)

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「いじめ問題への理解と援助-発達保障の観点から」報告

講師
楠凡之(北九州市立大学)
日時
平成27年10月5日(月)10:40~12:40
会場
発達科学部 大会議室(A棟2階)
報告
本講演では,いじめ問題を発達保障の視点から捉え,その理解及び援助についての数個の事例レポートが報告された。いじめ問題を捉える三つの視点として,発達論的な視点,児童虐待問題と関連させる視点,発達障害と関連させる視点が挙げられた。また,いじめという行為が起こる理由について,子どもの生きづらさや内的葛藤の表出と,自己肯定感を取り戻そうとする営み,一つの発達要求であるとが挙げられ,その克服課題として集団指導の取り組みといじめ加害者の子どもへの指導の取り組みが紹介された。集団指導としては主に,自分や学級のきまりを自分たちの手で決めて守ることを身につけさせることや,子どもがお互いの生きづらさや葛藤を等身大に表現し合える場を作ることなどがあった。いじめ加害者の子どもへの指導としては,子どもが自分のありのままを受け止め,自己効力感を感じることができるような指導などが挙げられた。
本講演が現代を生きていく人々へ与える示唆は大きいだろうと思ったが,特に,将来教師として勤めていく筆者にとって,ここで紹介された事例レポートや楠先生の話は,とても心に響いた。そのなかでも,楠先生が「view」という単語を用いて,子どもたちの目線から事態を考える事を強調していたところは,教師として子どもたちに接するとき,いじめ問題にだけ限定せず常に考えていかなければならないことであろうと思った。いじめの被害者であれ加害者であれ,教師が,いじめという苦しい沼にはまるしかなかったその子の「view」から事態を理解することは,いじめ問題の克服の一つの大きな鍵であることを実感したのである。また,本講演のテーマでもある「発達保障の視点から」いじめ問題を捉えるということから考えると,いじめ問題が深刻化していくのは,子どもたちの発達がきちんと保障されていないことの反証であり,子どもたちの発達をどう保障していくべきかについて改めて考えていきたいと思った。(人間発達専攻 M1 Park Jimin)

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「学習研究への心理学的アプローチ:問題解決型算数授業の検討」報告

講師
河﨑美保(追手門学院大学心理学部准教授)
日時
平成27年10月19日(月)13:20~14:50
会場
発達科学部 A427(A棟4階)
報告
本講義では,学習研究への心理学的アプローチとして,小学校第5学年の算数授業「単位量あたりの大きさ」を題材に,問題解決型算数授業の検討について解説が行われた。そこでは,(1)非規範的解法を含む複数の解法の共有による学習促進効果を検証するために,プレポストテストを利用したその有効性の分析や,促進をもたらすメカニズムについて紹介された。また,(2)複数解法提示の学習促進効果が生まれる状況を検証するために,転移課題の分析や学習者のペアによる発話データの検討について紹介いただいた。筆者は,理科授業における議論の質の向上を目指したデザイン研究に取り組んでおり,本講義で提示された事例と同様に,学習者の発話データの分析や,プレポストテストによる知識理解状況の検討などを行っている。本講義を通して,研究の仮説を検証するために必要な調査手法や,調査結果に応じて追加分析を取り入れることの重要性など,算数授業を事例とした心理学的アプローチの観点から,自身の研究を進展させる上で有意義な内容を学習することができた。(人間発達専攻 D3 村津啓太)

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「現場の授業改善に資する理科授業研究」報告

講師
山下修一(千葉大学教育学部教授)
日時
平成27年10月20日(火)15:10~16:40
会場
発達科学部 中会議室A(A棟2階)
報告
本セミナーでは,理科教育において授業研究に先端的に取り組んでいる山下先生をお招きして,「現場の授業改善に資する理科授業研究-そして,優れた日本の理科授業を世界に紹介しよう!-」についてご講義いただいた。日本の理科授業は国際的にも注目を集めている。例えば,TIMSSの理科授業ビデオ研究で,優れた理科授業の例として,観察・実験が重視されている日本の理科授業が海外に伝えられている(小倉,2004)。しかしながら,日本の理科授業の良さが国内において十分に認められていないのが現状である(Lewis, 2011)。そこで,理科授業研究の課題について研究が推進され(例えば,市川,2008)その良さを継承することの重要性が指摘されてきている(山下,2015)。
本セミナーでは,すぐれた日本の理科授業をさらに改善するためのポイントについて実践に基づいた講義を受けることができた。そのポイントの具体は,例えば以下のものがあった。一つは,コミュニケーション活動に伴う説明が,学習内容の理解を促すことを教師が自覚したうえで,グループでも児童,生徒が考えたり討論したり結論を導いたりするような場面を設けることである。もう一つは,児童,生徒にコアとなる知識を獲得させ,獲得した知識を適用した説明を促すことなどである。
この講義を通して,授業研究の核となる事項を学ぶことができた。それは,単元内のみならず,単元間の内容知識のつながりや系統を知る教材研究の重要性である。また,それは,言語活動の充実のための,児童,生徒に使わせる言語の具体的な想定の必要性である。(人間発達専攻 M2 神山真一)

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「オープンエデュケーションによる教育改善~北海道大学における反転授業の導入事例から~」報告

講師
重田勝介(北海道大学情報基盤センター・准教授)
日時
平成27年10月26日(月)15:10~16:40
会場
発達科学部 A427(A棟4階)
報告
本講義では,MOOCs(大規模公開オンライン講座)やOCW(オープン・コース・ウェア)の事例が紹介され,オープンエデュケーションの特徴や意義が示された。具体的には,次の3点に関する知見を得ることができた。(1)特徴には,教材を無料でインターネット上で公開できることや学びたい目的に即した適切な教材を取得できること,共に学び教えあうコミュニティができることがある。(2)意義には,教材の共有や教育の改善,生涯学習を支えることがある。(3)オープンエデュケーションは,複線的なキャリアや学び直しを前提とする制度を支え,誰でも自由に教え・学べる社会を実現する可能性がある。
筆者は,フランスの国際学校において,デジタル教材を用いた反転授業に取り組んできた。本講演を通して,オープンエデュケーションによる反転授業の可能性を再認識できた。また,オープンエデュケーションは学習者だけに意味があるものでなく,教える側にも意味のあるものだと学ぶことができた。(人間発達専攻 M1 大黒仁裕)

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「知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムについて」報告

講師
小川義和(国立科学博物館/筑波大学客員教授)
日時
平成27年10月29日(木)15:00~16:30
会場
発達科学部 A427(A棟4階)
報告
本講義では,「知の循環型社会における対話型博物館生涯学習システムについて」をテーマとして,博物館活用モデルを確立するためのデータベースシステムの紹介や,国立科学博物館等で実施されている学習プログラムの事例をご紹介いただいた。具体的には,(1)博物館の利用者・学芸員・設置者の三者に必要なミュージアムリテラシーに関する議論や,(2)科学系博物館で実施されている学習プログラムを分類するために開発されたフレームワーク,(3)科学リテラシーパスポートシステム「PCALi」を利用した学習プログラムの実施事例,さらには,(4)今後の博物館に求められる「知のプラットフォーム」としての役割について解説がなされた。この講義を通して,すべての人が学ぶ生涯学習社会を実現させるという観点から,科学系博物館の主催する学習プログラムの重要性について再認識できた。また,博物館の研究を担う学芸員を育成する仕組みの充実や,データ収集における世代の偏りの解消が課題として挙げられることを確認することができた。(人間発達専攻 D3 村津啓太)

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「大規模調査に表れた日本の児童・生徒の科学的論述力の課題-科学的問題解決と探究に焦点を当てて-」報告

講師
中山 迅(宮崎大学大学院教育学研究科教授)
日時
平成27年11月11日(火)13:20~14:50
会場
発達科学部 F256(F棟2階)
報告
本セミナーでは,日本の理科教育の改革に先端的に取り組んでいる中山先生をお招きして,「大規模調査に表れた日本の児童・生徒の科学的論述力の課題-科学的な問題解決と探究に焦点を当てて-」についてご講義いただいた。
学習指導要領では,児童の概念形成が適切になされるように,内容の系統性が重視されている。例えば,物質の保存性について概念を形成するために小学校3年生で物質は形が変わっても重さが変わらないことを学び,4年生では空気は目に見えないけどそこに確かにあることを学ぶ。しかし,学習指導要領の内容を学んだからといってこれら概念形成が容易になされるものではない。
特に具体例を挙げて説明していただいたのは,条件をコントロールして実験計画を立てる力に関する課題であった。授業内において教科書にある課題解決のために条件を統制して問題を解決する経験をしていたとしても,それが未知の問題に対応する力になっていないことが平成24年度の学力調査で明らかとなっている。児童自らが試行錯誤して実験計画を立て,未知の事柄について考える力をつけることがこれからの理科学習に求められる課題である。
授業を行う者には,児童につけたい力と,児童につけたい力がつく指導法の一体化が求められる。教科書にあることを教えることに終始するだけではなく,その力が新たな問題に出合った時に解決を助ける力となっているのかを観点に授業を構想することの重要性が再認識された。(人間発達専攻 M2 神山真一)

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「理科教育におけるアナロジーとモデル」報告

講師
内ノ倉真吾(鹿児島大学教育学部准教授)
日時
平成27年11月16日(月)15:10~16:40
会場
発達科学部 A427(A棟4階)
報告
本講義では,理科教育におけるアナロジーの基本的な構造やアナロジー使用の具体,モデルを用いた学習の課題が示された。具体的には,以下のような内容であった。(1)アナロジーとは,よく知っているもの(ベース)と知らないもの(ターゲット)を関係付ける理解の方法を指す。(2)アナロジーには,ベースとターゲットの類似性や構造,ベースやターゲットが用いられる目的や文脈に制約がある。(3)アナロジーの使用には,子どもの興味・関心を引きつける,抽象的・複雑な概念や原理をイメージしやすくなるといった効果がある。(4)アナロジーと認知的な葛藤を併用した教授は,概念的な理解の変容・促進に効果的に働く場合がある。(5)モデルと事物・事象をうまく関連付けることができない,モデルの性質や役割について理解ができていないといった課題がある。
筆者は,フランスの国際学校において,デジタル教材を用いた反転授業に取り組んできた。本講演を通して,アナロジーを用いた説明を,デジタル教材内で視覚化して行うことで,よりわかりやすい教材作りができる可能性を認識できた。また,アナロジーと認知的な葛藤を併用した授業づくりも学ぶことができた。(人間発達専攻 M1 大黒仁裕)

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「Education System in UGANDA」報告

講演者
Molly NAKIMERA(ウガンダ国立KABALE教員養成カレッジ講師/日本政府(文部科学省)奨学金 教員研修留学生)
通訳
内海 春(神戸大学国際協力研究科修士課程院生)
日時
平成27年11月19日(木)10:40~12:10
会場
発達科学部 B108(B棟1階)
概要
PPTを用いた報告の主な柱は以下のとおりである。
  • Introduction
  • Location of UGANDA
  • Brief History of UGANDA
  • School Year Calendar
  • Structure of Education System
  • Curricula
  • Policy and Administration
  • Issues
  • References
(文責:渡部昭男)

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「知識・学習をめぐるいくつかの考え方」報告

講師
加藤 浩(放送大学教授)
日時
平成27年11月25日(水)15:10~16:40
会場
発達科学部 中会議室A(A棟2階)
報告
本講義では,知識観,学習観に関する様々な考え方をご紹介していただいた。特に,社会構築主義的な知識観については,その成立から現在の議論を含めた詳細な解説を拝聴した。自分にとって難解な概念である社会構築主義的な知識観,学習観について,エスノメソドロジーやいくつかのケースを用いて丁寧にご教授をくださり,その一端に触れることができたと感じた。自身の研究では,人形劇を媒介とした学習環境の構築にも一部考察を試みている。その際に,どのような知識観,学習観に自分が立脚しているのか,また,その他の視点からはその成果をどのように捉えることができるのか,といったことについて考慮し,分析するための大きな助けとなる講義であった。(人間発達専攻 D1 江草遼平)

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「糸賀一雄をめぐる学術講演会」報告

講師
講演① 蜂谷 俊隆(美作大学):糸賀一雄の研究-人と思想をめぐって
特別報告 國本 真吾(鳥取短期大学):「ミットレーベン」~故郷・鳥取での最期の講義
講演② 冨永健太郎(日本社会事業大学):愛と共感の教育-ある知的障害者施設の実践
日時
平成28年2月20日(土)12:30~17:00
会場
発達科学部 大会議室(A棟2階)
報告
本企画では,二つの講演と特別報告,そのなかで参加者を交えた質疑応答・ディスカッションを行った。
講演①では,福祉史研究の意味や役割,特に福祉研究において歴史の方法をとることについて蜂谷氏の見解が述べられたあと,糸賀一雄の人物史を3期に分けて検討された。これまであまり注目されることがなかった下村湖人と糸賀との親交に着目し,糸賀の思想形成に下村が与えた影響について指摘された。特別報告では,糸賀の故郷である鳥取から國本氏による「『ミットレーベン』~故郷・鳥取での最期の講義」の講義録音の紹介があった。糸賀の肉声が映像を交えて示され,その講義のなかで「ミットレーベン」という言葉が冒頭・中盤・終盤と語気の変化をなして語られる様子が詳しく説明され,「ミットレーベン」に込めた糸賀の思いに会場中で思いを馳せた。講演②では,冒頭に「糸賀一雄最期の講義 - 愛と共感の教育」の映像が提示されたあと,冨永氏が関わった障害者支援施設「かりいほ」の創設と実践について映像を交えた紹介があった。「罪を犯した」障害者を受け入れ,支援する施設である「かりいほ」を一つの事例として,通常の社会規範のなかで生きることが難しい人たちについて,すべての人への「愛と共感の教育」を提唱した糸賀はどのように考えていたのだろうかと問題提起された。
参加者からは各演者に対して質問があり,参加者同士が意見交換する場面も見られた。糸賀生誕から2世紀目に入り,これまでのように糸賀を「発達保障」思想の代名詞として金科玉条とするのではなく,今回各講演によって問題提起されたような各方面から,また様々な人物を切り口として,糸賀の思想とその背景をより深く「解体」して検討する必要性が今後の展望として共有された。(博士課程後期課程院生 垂髪あかり)

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