人間発達環境学研究科が推進する産官学民協働型の実践的研究は,個々の領域で困難とされる課題に対し,アクションリサーチの手法を用いた解決支援プログラムを開発・提供するものです。関係する人々と協働しながら研究を通して社会貢献の取り組みを積極的に推進しています。
ESDプロジェクト
持続可能な開発のための教育(ESD = Education for Sustainable Development)の観点で,以下の3つのプロジェクトを実施しています。
- ESDネットワーク支援プロジェクト
ESD に関心をもつ,地域社会のさまざまな団体・組織のネットワーク化を,当事者とともに促進するプロジェクトです。新しい理念にふさわしい新しい教育方法をさぐりながら,ESDグローカルスタディツアープログラム(略称:ESDスタディツアープログラム)の企画・実施を通して当事者が協働するのを支えたり,海外のESD推進ネットワークとの関係づくりを支援したりしています。 - 大船渡支援ESDプロジェクト
東日本大震災の被災地の復興・まちづくりを人間育成・コミュニティ創成の観点から支援しています。ボランティアコーディネート,ワークキャンププログラム,スタディツアーの企画運営など,地域教育や社会教育の活動の中で蓄積されてきた手法を使って,被災地の「長く続く新しいまちづくり」に関わっています。 - 持続可能な島づくりプロジェクト
本研究科と教育連携協定を結んでいるハンセン病療養所邑久光明園(岡山県瀬戸内市)の協力のもと,新しい「人権学習」及び,それを基盤としたESDプログラムを実施しています。ハンセン病元患者の人権・幸福追求に寄り添うとともに,「いのちの持続性」を大切にする人間形成の方法論を探究しています。
障害共生支援プロジェクト
学内外の研究員,対人支援やアート活動などを学ぶ学生のみなさんが協働して,障害のある人々を排除しないインクルーシヴな社会づくりに関わる実践・研究・教育を行っています。「のびやかスペース あーち」やカフェ「アゴラ」などの学内施設をフィールドとし,また韓国の研究機関との共同研究によって,制度の構築から人々の日々の葛藤解決まで,幅広い課題に取り組んでいます。これまでに取り組んできた実践,共同研究,学生が参加した研究の成果について,多くの出版物を通して公開しています。
心理教育相談室の取り組み
心理教育相談室担当の本研究科教員は,心理教育相談室での相談援助活動の他に,さまざまな領域において多様な地域貢献・社会貢献活動をおこなっています。主なものとしては,地域の小・中・高等学校,特別支援学校,社会福祉法人の主催する講演会や研修会に指導的な立場で参画しています。また,地域住民が抱える心理的問題に対する実践的な相談活動や巡回支援にも取り組んでいます。さらに,東日本大震災の災害復興支援に関連して現地の学校や大学に赴き,スクールカウンセリング支援や学生相談支援に関わる活動,講演等を実施しています。
サイエンスカフェの開催と支援
サイエンスショップは,神戸市において「サイエンスカフェ神戸」を開催するほか,伊丹市,姫路市,南あわじ市など,兵庫県内を中心に,各地で市民グループ等によるサイエンスカフェの企画・開催を支援しています。サイエンスカフェは,街のカフェなどに科学者等の専門家をゲストに招き,科学・技術などに関する話題について語るイベントで,市民と科学者等の対話の場づくりを目的としています。
市民の環境保全活動等への支援
サイエンスショップは,市民による地域の環境保全活動への支援にも取組んでいます。これまでに,南あわじ市神代地区のシカによる食害対策への支援や,兵庫県西部の佐用川流域のオオサンショウウオに象徴される生態系保全活動への支援などに取組んできました。本研究科の研究者が開発した「環境DNA」の手法により,市民グループ「佐用川のオオサンショウウオを守る会」の河川調査に協力しています。
マスターズスポーツを通じた生涯スポーツ振興
成人・中高年者を対象としたスポーツ振興活動として,元高校球児の大会「マスターズ甲子園」の運営と共に,その参加者の母体である「全国高校野球OBクラブ連合」を発足させ,現在37都道府県520校が加盟する組織運営事務局をマスターズスポーツ振興支援室に設置し,学生と教員が主体となって振興活動を継続しています。同支援室では2021年に開催される関西ワールドマスターズゲームズの世界大会の招致にも関与し,開催に向けてマスターズスポーツ推進を通じた社会貢献活動と共に教育と研究のフィールドを開発しています。
鶴甲いきいきまちづくりプロジェクト
高齢化が進行している地域コミュニティにおいて,多世代が心身ともに健やかで,安全に暮らせるまちづくりを行うため,「鶴甲いきいきまちづくりプロジェクト」を立ち上げ,アカデミックサロンの企画・実施に取り組んでいます。鶴甲地区(神戸大学発達科学部キャンパス周辺地区)の住民の学びと活動の場を基礎とし,神戸大学をコミュニティの中心に位置付けます。アカデミックサロンでの各種プログラムを通して,住民同士のネットワークを形成するとともに,ファシリテーターを養成し,住民が企画・運営するコミュニティ活動を支援しています。
「初等教育要領」の開発
本研究科には,神戸大学の附属学校と連携し,共同研究に取り組んでいる教員が少なくありません。近年では,文部科学省の指定を受けて(2013年度~2016年度),本学の附属小学校と附属幼稚園が取り組んでいる「初等教育要領」の開発への研究協力が挙げられます。幼児教育と小学校教育の9年間を一体としてとらえた「初等教育要領」を作成することで,幼稚園と小学校との円滑な接続,発達段階を踏まえた教育内容の提供が期待されています。2015年1月には,「『幼小接続』から『幼小一体』へ」というテーマで研究協議会が開催されました。人間発達専攻学び系講座の教員が中心となりながら,附属学校との連携を通して,研究成果を広く社会に還元するように努めています。