本ウェブサイトは2022年3月末をもって閉鎖いたしました。このページに掲載している内容は閉鎖時点のものです(2022年3月)。

ジェンダー・コミュニティ支援部門

「ジェンダー問題」や「生きづらさ」について丁寧に考えるコミュニティの創成を目指します

「ジェンダー問題」や「生きづらさ」について,一人一人が日々抱えているさまざまな問題を,ともに考える対話のコミュニティ(一般的に「哲学カフェ」と呼ばれています)を作ります。それらの問題を「マジョリティ」の立場ではなく,むしろ「マイノリティ」の立場に立って考えていこうとする哲学的実践を行います。「生きづらさ」とともに暮らしている姿を現象学的に描き,一人一人の経験を映し出す「質的研究」を行います。多様な側面から一人一人の「語り」の地平を拓き,全ての支援にかかわる営みには欠かせない「生きづらさ」の哲学を探究します。

現場の問いを掘り起こす

社会のさまざまな場所で潜在的に問題となっていることを,社会の中で生きている人々との対話を通して掘り起こし,問いとして考察することに取り組んでいます。例えば,ジェンダーやセクシュアリティの問題をはじめ,医療,介護,福祉,ビジネス,教育,テクノロジー,環境などについて,それらの問題に常に関わっている人々との対話を行う中で「何が問題であるのか」を吟味することを重視します。

障害のあるお子さんと共に生きているお母さんたちの哲学対話

障害者歯科学・臨床哲学(ジェンダー学)・臨床心理学・小児看護学という4領域からの学際的アプローチによって,大阪大学歯学部附属病院障害者歯科治療部に通院している障害のあるお子さんとともに暮らしている保護者(主にお母さんたち)の「生きづらさ」を改善することを目的にしています。障害のあるお子さんへの歯科治療に並行して,その親たちと対話をするなかで,その経験や感情を詳細に記述していく臨床哲学的アプローチと,一対一の語りを通じて心の変容を促す心理療法的アプローチを行うことで,親たちの社会的・心理的な状態の理解と支援を促進させます。それは,親たちの愛情や支援なしには生きることの難しい障害のあるお子さんの心身の健康状態,QOLの向上にも寄与できると考えられます。集められた「哲学対話」の語りの質的分析から,障害のあるお子さんとその親への包括的支援に役に立てたいと思います。神戸では,のびやかスペースあーち「居場所づくり」プロジェクトの場所をお借りして,障害のある子どもとともに暮らしているお母さんたちと支援者が一緒に哲学対話を開催しています。

ジェンダー学と臨床哲学の融合―「マイノリティ研究」「生きづらさ研究」推進拠点の創造

格差と排除が蔓延する現代社会において,マイノリティとして生きることの意味とは何なのでしょうか。「マイノリティ研究」「生きづらさ研究」の実践としての哲学対話を,医療・福祉・教育・などの現場において活用するため,国内外の実践を調査しながら,理論や実践方法を確立します。ありまのままの生が否定され,非人間的な状況に置かれているマイノリティにとって,何をどのように改善すれば生きやすくなるのでしょうか。同じ社会を生きる当事者として,「私(たち)はどのとうに生きるのか」という方向性を求め,その問いかけから「マイノリティ研究」と「生きづらさ研究」が生まれました。これら研究推進拠点は,単に専門的知識の提供や学術的なアドバイスにとどまるものではなく,哲学対話によって利用者と実務者(支援者)のニーズをそれぞれに聴き取り,一人一人の「つながる」能力を高め,コミュニティ活動のエンパワメントについて研究を促進していきます。

北欧・北米・英国・オーストラリアの研究者・実務者との連携

ジェンダーの問題を多角的に捉えようとする世界的な動向を踏まえて,主にフェミニズム思想の研究者や表現活動をしている実務者と連携しつつ,具体的な問題(マイノリティやジェンダーに関する研究)に取り組んでいる新しい哲学実践の方法を探究しています。特に,フェミニスト現象学を使って,障害のある女性の生活世界や非言語表現の有用性についての研究を続けています。


スタッフ

リーダー
稲原 美苗 (専任研究員・准教授 人間発達環境学研究科 人間発達専攻 学び系講座)