心身発達専攻
心理発達基礎論コース (心理発達論教育研究分野) |
子どもの発達に作文は何ができるか 若原 ひとみ さん(前期課程2年生) 子どもの発達を支えるために学校教育で何ができるのか,それが私の最大の興味です。とくに,作文をとおして小学生の思考や心の発達を支えるための指導方法を研究しています。人の内面で起こっていることは外からは見えづらいものですが,それをいかに見えるかたちにして取り出すのか。作文は,その手段として可能性を秘めています。であれば,作文指導は子どもの発達にどう関わることができるだろうか。そこが難しいところでもあり,またそれだけに面白いところでもあるのです。 教科教育が何をもとに何を目指し,それが子どもにとってどのような意味を持つのか。授業をとおして,こうした視点の重要性を感じています。他コースの学生との交流からは,専門の中だけでは気づけなかった子どもを読み解く新鮮な観点を見出すこともしばしばです。日々,子どもの姿について学び,語り合う中で,子どもがたくさんのことを私たちに教えてくれる。そこに人間の奥深さを感じています。 |
臨床心理学コース (心理発達論教育研究分野) |
臨床心理学の理論と実践の両輪において,広く深く学んでいく。 徳永 晴美 さん(前期課程2年生) 私は他大学の学部で心理学を学んでいましたが,その過程で臨床心理士の仕事に興味を抱き,本研究科に進学しました。こちらに来て,深い洞察と経験をお持ちの先生方,身をもって目指すべき姿を示してくださる先輩方,同じ目標を持ち切磋琢磨し合うことのできる仲間に恵まれました。授業の内容はとても充実しており,臨床心理学の理論をより専門的に学べるだけでなく,自分の研究分野に関してもじっくり取り組むことができます。また,院生が主体となる「心理教育相談室」の運営や各機関で行われる実習など,実践の場を通して学ぶ機会が多いことも,本コースの大きな魅力です。授業や実習を通して,理論と実践の両輪で自らの考えを深め,学びを広げていくことは,臨床心理士を目指す上でとても有意義なものであることを実感しています。今は,臨床心理士への第一歩を踏み出す基礎づくりの真っただ中。忙しいながらも充実した日々を過ごしています。 |
健康発達論コース (健康発達論教育研究分野) |
自分を再構築!足と靴の健康教育で社会貢献 上田 恵子 さん(前期課程2年生) 私は足育スタイリストとして,正しい靴の選び方と履き方,正しい姿勢と歩き方の指導を行っています。大学院の進学は,娘の靴選びに悩み,現在の指導教授の講座に参加したことがきっかけです。また,O脚で外反母趾の足を持つ親の度重なる転倒,受講生の足のトラブルの多さから,専門学校で足と靴について学び,欧米の足育を調べるうちに,日本人の足と靴に対する意識が大変遅れていること,それが足(脚)だけでなく,全身に様々な影響を及ぼしていることに危機感を持ちました。大学院では,一次予防を目指した「子どもの足と靴の健康教育」を研究し,社会に貢献したいと考えています。健康発達論コースでは,幅広い分野の先生がたから指導を受けることができ,年齢や国籍も様々な仲間に刺激を受けながら,学ぶことに時間を費やせる喜びを日々かみしめています。大学院を目指す人には,自分を再構築すべく,ぜひ挑戦することをおすすめします。 |
教育・学習専攻
教育科学論コース (教育科学論教育研究分野) |
研究や仲間との交流を通じた最高の成長空間 村津 啓太 さん(前期課程2年生) 私は科学教育を専攻しており,小学校理科における学習者の議論能力の育成を目指した授業デザイン研究を行っています。学習者の議論能力に関する英語論文の読解には根気が必要ですが,その内容から大学教授や現場の教師と共に1つの授業を構想する過程は私にとって大変刺激的で,実際に構想した授業が教育現場で有効であった時の達成感は研究の大きな励みとなっています。またコースの魅力的な先輩や同級生の存在も,私の大学院生活を豊かにしている大きな要因です。教育に対して異なるアプローチで研究している仲間と交流する中で,教育に関する知見を多方向に深めることができます。さらに本コースの学生は1つの研究室を共有しているため,研究が行き詰まった時に互いに相談ができ,また励まし合う文化が定着しています。このような居心地の良い人間関係も,私が研究に全力で取り組むことができる大きな理由の1つとなっています。 |
子ども発達論コース (子ども発達論教育研究分野) |
自分自身がもっていた「あたりまえ」を見つめなおす 平野 泰亮 さん(前期課程2年生) 私は,「子どもが自分の成長してきた過程を自覚すること」について研究しています。子どもたちが自分を見つめるときに他人と比べるだけでなく,過去の自分と比べて成長してきたことに目を向けることで,これからの自分に期待することができるようになるのではないかと考えています。成長過程の自覚を促すためにはどのような支援が有効なのかについて,「発達」という観点から明らかにしたいと考えています。 本研究科の最大の魅力は,ゼミだけでなく授業でも様々な人たちと議論をすることができ,それによって日々多くの見識を得ることができる点です。特に授業では所属しているコースのみならず他コースの人たち,たとえば臨床心理学や数学を専門としている人たちとも,子どもや教育について議論することができ,それまでの自分にはなかった視点に気付かされます。自分がその人たちと出逢う前に抱いていた「あたりまえ」を見つめ直すきっかけを与えてくれます。 |
発達支援論コース (発達支援論教育研究分野) |
つながる経験,つながる人,つながる研究 柴川 弘子 さん(前期課程2年生) 私は大学卒業以来,高校教員として総合的な学習の時間や部活動を通じ,高校生と一緒に地域の方や団体と協働した様々な企画作りに関わりました。その経験の中で,青少年の主体形成や社会参画の課題,地域と関わる中での学びの可能性を考え始めました。そして,学校の枠組みから出て新しい視点で青少年の発達支援について研究したいと思い,退職しました。 大学時代の専攻はアメリカ文学で専門が異なる上,長い間仕事中心の生活を送っていましたので,大学院での新たな分野での学問に対する不安もありましたが,先生がたはむしろ多様性や学際性,学生一人ひとりの問題意識や経験を大切にして下さいます。また,社会人経験者や留学生など多様な経験を持ち,様々なフィールドで活動をしている学生も多く,意見を交わす事が刺激になります。多彩に展開する授業も,全て自分の研究や経験と繋がります。家庭や仕事を持ちながらの院生生活で大変では,と周囲には言われますが,非常に意味ある挑戦だと日々感じています。 |
人間行動専攻
身体行動論コース (身体行動論教育研究分野) |
Life is motion!人間の“行動”を多角的に探求する 白石 大悟 さん(前期課程2年生) 「生きている」それはすなわち行動していることです。本専攻には,人間の行動を様々な角度から研究されている先生方がおられます。私が専門的に学んでいるのは運動生理学ですが,他にも心理学や社会学の知識も学ぶことができます。授業も受身ではなく,ディスカッションをしたり,自分の興味のあるテーマでプレゼンテーションをしたりと,毎日が学習の宝庫です。人間の“行動”に関するテーマについて様々な視点で学べることは私を大きく成長させてくれます。 人間の様々な“行動”の中で私が興味を持っているのは「人間の巧みな動きの習得」です。自転車にいつでも乗れるのは,子どもの頃に学んだ乗り方を覚えているからです。私はその様な運動の記憶に関して研究を進めています。私たちの周りには不思議なことがたくさんあります。自分が感じた身近な疑問について,専門的に研究できることは大きな喜びであり,毎日充実した日々を仲間とともに過ごしています。 |
行動発達論コース (行動発達論教育研究分野) |
多様な分野の人と出会い,新しいアイデアが浮かび上がる 周 欣儀 さん(前期課程2年生) 私は,国立台湾大学の政治学部を卒業して神戸大学に留学しました。今,台湾でも,少子高齢化が進んでいるので,少子高齢化現象がもたらす影響を研究したいと思い,高齢化大国である日本へ来ました。大学を選ぶとき,ジェロントロジー研究室がある人間発達環境学研究科のホームページを見て,すぐに神戸大学に決めました。ジェロントロジーは多分野的,総合的な学問で,人間発達環境学研究科のような総合的な研究科で研究するのが一番ふさわしいと思いました。入学してから,違う分野の授業を受講し,多様な視点から少子高齢化の現象を理解しながら,専攻が違う人と交流し,それまで考えたことない角度から少子高齢化の現象を捉えることができ,新しいアイデアが浮かび上がってきました。ゼミの先生と先輩から様々なサポートとアドバイスをいただいて,心強くなりました。現在は,大学時代の専攻を生かして,ジェロントロジーと政治学を組み合わせ,高齢者の選挙行動に注目し,研究しています。 |
人間表現専攻
表現文化論コース (表現文化論教育研究分野) |
まだ手の付けられていないテーマに取り組む,やりがいと面白み 植田 有佳 さん(前期課程2年生) アメリカのファッションブランドであり,日本でも人気のあるラルフ・ローレンをご存知の方は多いのではないでしょうか。私は現在,このブランドのアメリカにおける成立と展開について,ファッション文化論の視点から研究しています。「トラディッショナル」なイメージを一貫して消費者に訴求することで,企業として大きな成功を収めたラルフ・ローレンですが,ファッション史においては必ずしも注目されてきたわけではありません。そこで,今まで明らかにされていない事実を自分の手で少しずつ解明し,文化研究として展開させることがこの研究の目的です。調査・研究には時間と根気が必要ですが,その進捗には大きなやりがいを感じています。 本コースには,ファッション文化論のほかにもさまざまな表現文化分野の先生方がおられるため,自分の研究テーマについて意外な視座を得られることがよくあります。また,少人数のゼミと丁寧な指導も,このコースの大きな魅力です。 |
コミュニティアートコース (表現創造論教育研究分野) |
ちょっと外へ出かけよう 宮田 晴菜 さん(前期課程2年生) 大学院は学部に比べると授業数そのものは少なくなります。その分,私は学内はもちろん学外へも積極的に出かけ,公共施設やギャラリー等のボランティアに参加しています。専門分野の勉強をしていると忘れがちですが,ちょっと外に出てみれば美術鑑賞が好きだという人が少ないことに気づかされます。私は社会と美術の関係について研究しているので,美術にあまり興味がない人と出会うのはとても大切なことです。自分と違う興味をもった人たちとの対話では,関心を共有する者同士からは得ることのできない多様な価値観に触れることができます。専門分野から離れてみると,社会と自分の専門分野との関わりを考えるきっかけを得たり,狭くなりがちな視界を広げることができると思います。これから,作品制作を続けると同時に修士論文に取り組もうとしていますが,こうした多様な出会いは,自分の認識を客観的に確かめるためにとても重要だと感じています。 |
人間環境学専攻
自然環境論コース (自然環境論教育研究分野) |
毎日が新しい挑戦と新しい発見。 世界の先端科学を推し進める存在へ。 六條 宏紀 さん(後期課程3年生) 2011年6月,私たちの研究室は自ら開発した新しい望遠鏡を大気球に載せて打ち上げ,宇宙観測実験をスタートさせました。これまで誰も見た事のなかった宇宙の姿を明らかにする,挑戦的なプロジェクトです。 私は立ち上げ初期段階からこの計画に携わってきました。研究室の教員や仲間たちだけでなく,JAXAや他大学など外部の研究者,企業の技術者とも連携をとり,私たちが目指す理想の観測装置を実現していきました。問題にぶつかっては,解決策を考え,改良を重ねる。この様な経験の中で,新しいものを生み出すことへの興奮と喜びを感じてきました。今,自分たちの手でこの大きなプロジェクトが進んでいくのを日々実感しながら,充実した研究生活を楽しんでいます。 研究活動は毎日が挑戦です。そして毎日,新しい出会いと発見があります。私たちの計画はまだ始まったばかりです。次なる新しい発見を目指して,ますます研究に打ち込みたいと思っています。 |
数理情報環境論コース (数理情報環境論教育研究分野) |
「有限の時間」で「無限の可能性」を追求・実現できる環境 増井 貴明 さん(前期課程2年生) 私は他大学で純粋数学としての代数学を専攻していましたが,大学院ではそれらの知識を元に,より身近な日々の生活と密接に関わる情報環境における応用数学を研究してみたいと強く考えるようになり,進学する事を決めました。現在は,数式処理の研究として,計算機上で扱い得る様々な数学的処理(グレブナ基底計算や多項式の因数分解など)を行う為のアルゴリズムやその理論的背景について学んでいます。分野を変えての研究は一筋縄では行かず日々苦戦続きですが,「あ!なるほど!」と一つ納得する度に「もっともっと知りたい!」と気付けば夢中に取り組んでいる過程は,数学の無限の奥深さや今後の研究への可能性を感じる瞬間です。今後もさらに,限られた学生生活の中で多くの事を吸収し,先生方のきめ細やかなご指導や仲間との意見交換や議論など,互いに切磋琢磨し合える充実した環境のもとで,納得いくまでとことん取り組んでいきたいと考えています。 |
生活環境論コース (生活環境論教育研究分野) |
実験研究を軸に学際的視点で問題解決を図る食環境学 山本 寛子 さん(前期課程2年生) 私は人間の生活要素として不可欠な“食”に対して,“環境”という観点からアプローチしています。具体的には茶園の過剰施肥による地下水汚染問題に取り組み,施肥量の削減が土壌溶液の組成や茶の品質に及ぼす影響を分析化学の手法により明らかにします。試行錯誤を重ねて有効なデータを得た時には,研究成果というだけでなく,社会貢献にも繋がるのではという喜びを感じます。 様々な分野の研究者が集まり,既存の学問領域にとらわれない本研究科では多面的に物事をとらえることの重要性に気付かされます。この食環境学研究室では主に実験により解決を目指していますが,様々な視点から研究の意義や位置づけを見つめ直す機会に恵まれています。 修了生の進路は多岐にわたります。研究仲間は自分が何をしたいか,何を目指すのかに真摯に向き合い,高い目的意識を持って研究生活を送っていて,その姿が私には刺激となっています。 |
社会環境論コース (社会環境論教育研究分野) |
自分を通じて社会を考え,社会に向けて自分を考える 城山 航 さん(前期課程2年生) 「社会環境論コースって何を勉強するの?」私がいつも困ってしまう問いです。所属学生も国籍から年齢,経歴まで様々ですし,一言で「社会環境」といっても範囲は広く,憲法や地方自治など複雑な制度の問題を学ぶ学生もいれば,観光やボランティアなど身近なことを研究する学生もいるのです。私はといえば,E.フロムという人の思想を研究しています。研究では彼の著作に向き合います。彼に限らず深く思考された文章に触れると,わからないなりに何か感じるところがあるものです。演習などで発表や議論を行うと,その「何か」に多様な角度から光が当てられ,それをとらえる言葉が見つかります。自分が何かに触れて,感じたことを考え,言葉にする。それは自分について考えることであり,自分と触れたものと言葉を通じて社会を考えること。自分を通じて社会を考え,社会に向けて自分を考える ―社会環境論コースで学べるのは,つまりそういうことのようです。 |
案内パンフレット 『神戸大学発達科学部・神戸大学大学院人間発達環境学研究科2013』 より