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神戸大学大学院人間発達環境学研究科 大学院生の声2014


<人間発達専攻>

自分の興味を探る研究ができる場所

中井 由貴子 さん (こころ系講座 前期課程2年生)

私は,自己のイメージと他者の目に映る自分の姿の違いに興味を持ち,研究をしています。友人や家族など大切な人の目に映る自分と自分自身が抱く自分のイメージのズレを感じた時,人はどんな気持ちになり,どんな行動をとるのだろうという関心からこの研究を始めました。実際に研究を行うと,他者からどう思われているのかを尋ねる方法に課題や限界もあるなど大変なこともありますが,自己イメージと他者の目に映る自分の姿との違いについて,少しでも明らかにできればと思い研究に取り組んでいます。
授業などでは自分の研究とは異なる分野を研究している人たちと話をする機会もあり,今までの私の視点だけでは気づけなかった新しい考えに触れることができ,新たな視点から自分の研究を捉え直すこともできます。この研究科で出会えた人たちに,たくさんのことを教わり,いつも感謝しています。これからもたくさんの人に支えられながら,研究を頑張りたいです。


「語ること」と「聴くこと」で紡ぐ物語

こころ系講座 前期課程2年生

私は,同じ悩みや問題を抱える人々が集まる「自助グループ」に関心をもっています。私の研究テーマは,自助グループの場で「語ること」と「聴くこと」がその当事者にどのような意味をもたらすのかということです。自助グループには「言いっぱなし聴きっぱなし」というルールがあり,一人が話している間は誰も口を挟むことはなく,じっとその人の語りに耳を傾けます。じっくりと話を聴いてもらえるという体験は,語る側にどのような影響をもたらすのか。また,聴く側の体験とは一体どのようなものなのか。自らもその場に身を置きながら,語るということ,聴くということをあらためて考えてみたいと思っています。
現在は大学院での授業に加え,学校や病院,施設などさまざまな領域での実習を通して,貴重な経験を積んでいる毎日です。研究と実践のどちらも充実している恵まれた環境に感謝し,これからも仲間と切磋琢磨しながら,日々を過ごしていきたいです。


アットホームな雰囲気は,私にとって本当に宝物です。

劉 力瑋 さん (こころ系講座 前期課程2年生)

私は中国からの留学生です。中国の大学で,教育についての知識を少し身に付けました。入学してからは,川畑先生の下で,健康教育,行動科学を学んでいます。授業を通じて最新の知見に出合いながら,研究テーマをとことん掘り下げていく過程には,他では得がたい喜びがありました。私の研究テーマは「中国中学生の喫煙及びその関連要因について」です。喫煙に関する研究は山ほどありますが,中国では,特に中学生において,喫煙と心理社会的要因との関係についての研究は,まだまだ少ないという現状があります。その関連要因を明らかにすることによって,喫煙防止教育に科学的な根拠を提供していきたいと思います。
川畑研究室では,先生も先輩も,研究のことにしろ,生活のことにしろ,やさしく教えて下さいます。何があっても,日々,前向きに一歩一歩踏み出すことが重要だとわかりました。こういうアットホームな雰囲気は,留学生の私にとって本当に宝物です。


穏やかな日々のなかで,教育へのまなざしを養う

惟任 泰裕 さん (学び系講座 前期課程2年生)

教育科学論コースでは,歴史・制度・方法などの観点から教育について学ぶことができます。先生方は丁寧にご指導をしてくださり,図書館等の設備も充実していて,非常に恵まれた環境です。目標も背景もさまざまな学生が在籍し,学生同士とても仲が良く,穏やかに日々を送りながら勉強に励んでいます。その中で私は英語教育史を研究しています。岡倉由三郎や福原麟太郎など,英語教育に深く関わった人物の著作を読んだり,明治以降の英語教員養成の歴史を調べたりするなかで,「なぜ英語を学ばないといけないのか。」「日本人の英語が下手と言われる理由は何か。」といった疑問の答えを探求することはとても楽しいです。私は船寄先生の研究室に所属していますが,先生は「教育の未来を見通すために,歴史観を磨きなさい」とよく仰います。私も日本の教育に少しでも貢献できるよう,現代的な課題意識を持って,地に足のついた研究を着実に進めたいと思っています。


子どもたちが心身ともに健康に育つことを願って

中橋 葵 さん(学び系講座 前期課程2年生)

私は幼児の数概念の発達に関する研究を行っています。みなさんの多くは「幼児」「数」というキーワードから,おにごっこやお風呂で数を数えるのを思い浮かべるのではないでしょうか。このような日常生活の何気ない行為も,数概念を大いに反映した行為であるといえます。また,幼児期に発達した数概念は就学後の学習の基盤にもなります。
こうした観点から,私は幼児の数概念の発達の重要性を感じ,研究を始めたわけですが,より深い部分で私の研究を支えているのは,子どもたちに心身ともに健康に育ってほしいという願いです。その実現のため,研究で明らかになったことを現場の先生方にわかりやすく伝え,どのように支援していくかを一緒に考えていきたいと思っています。今の私ではとても力不足ですが,子どもが大好きで,教育に対する情熱に溢れた本研究科の仲間や先生方のもと,子どもたちが心身ともに健康に育つ未来に向けて,学んでいきたいと思います。


当たり前が当たり前ではない

青 格尓 さん (学び系講座 前期課程2年生)

私は中国の内モンゴルから来た留学生です。私は,中国の大学で人的資源管理専門を卒業し,その中で特に企業内人材育成に興味を持っていました。そのため,成人教育に興味を持ち発達支援論コースに研究生として入学しました。しかし,発達支援論コースに入学してから,私は今まで当たり前だと思っていた様々なことは当たり前でないことに気づかされ,「ショック」を受けました。例えば,「~だから~べき」や「~らしさ」のような日々当たり前に口にすることばは,実はその時の社会の潮流に形づくられたものだということです。このような「ショック」のお陰で,私は自分自身の出自に目を向けるようになり,修士論文のテーマを多文化教育に一変しました。
発達支援論コースは私のような留学生や社会人等の多様な背景を持つ人が集まり,また様々な分野の研究ができる「多様性」と「自由」の特徴があります。また,フィールドに出かけたり,ボランティア活動に参加したりする中で人との「出会い」のチャンスが多く,人と人との関係性のなかで大事な視点が得られます。こういった視点が,将来にもつながる大事な視点になると思われます。


スポーツを核とした人々の結びつきが生み出す力

稲葉 慎太郎 さん(人間行動専攻† 後期課程3年生)

現代社会のスポーツを取り巻く環境は,トップスポーツから市民スポーツまで実に様々です。私は,スポーツ社会学を専攻しており,特に,“生涯スポーツ”を実現するべく育成が進んでいる総合型地域スポーツクラブを焦点に当てて研究をしています。このクラブでは,スポーツをする人はもちろんですが,子どもの試合を応援する人,指導者や事務局として日々の活動をささえる人,さらに,クラブへの協賛などで応援している地元の商店や地域団体など様々な人々が関わっています。このようなスポーツ現場を中心とした地域社会との多様な結びつきが,活動をより豊かなものにしていくといわれています。私は研究を通して,スポーツに様々な人が関わることによって生み出されるソーシャル・キャピタル(社会関係資本)について探求し,実際に活動現場に好影響をもたらすことを実証することで,より豊かな地域スポーツのネットワーク形成に貢献できればと考えています。

† 人間発達環境学研究科は2013年4月に4専攻(心身発達専攻,教育・学習専攻,人間行動専攻,人間表現専攻)を改組し,人間発達専攻を設置しました。


広い視野で「ヒト」を見る

国宗 翔 さん (からだ系講座 前期課程2年生)

今日,世界中で高齢化が進行しており,「高齢者の転倒」が注目されています。私は理学療法士として医療現場で働いていますが,高齢者の活動や周囲の環境は多様化してきていることに加え,転倒する要因は様々であり,一つの側面からでは実態を十分に理解できません。このため転倒への対策や予防を目的とした研究は,自身の専門分野だけでなく広い視野を持つことが必要だと考えています。本研究科では,多様な研究が行われており,異なった視点を持つ人と意見交換をする機会が多く,今までの価値観が覆るような発見をすることもあります。私自身は障害物跨ぎ歩行における高齢者の特性を研究していますが,あらゆる観点の考え方に触れることができ,非常に充実した大学院生活を送っています。また,様々な領域に興味を持てることも本研究科の魅力の一つであり,研究を発展させてくれることはもちろんですが,人間として成長させてくれる環境であるとも思います。


自由な環境で,好きなことを思いっきりたのしむ!

井上 いぶき さん (表現系講座 前期課程2年生)

私は本研究科で,ピアノ演奏における楽器と奏者の相互コミュニケーションについて研究を進めています。これまで演奏の楽しさにのめり込んで来ましたが,その中でピアノ1台1台が持つ個性に驚いた経験をきっかけに,発達科学部で日本のピアノ製作の歴史と実情についても研究し,卒業論文にまとめました。そして,“ピアノという楽器の魅力”について更に探求しようと,大学院に進学しました。
私の場合,この研究を進めることは,ピアノを演奏することと密接な関係にあります。楽器のことをより深く理解し,楽器と奏者との関係について考察することは,自身の演奏を今までとは違った方向から見つめ直すことにも繋がるからです。このように理論と実践を両輪とした研究ができるのは,学際的で自由度の高い研究環境ならではのことと感じています。
みなさんも是非こちらに進学し,自身の専門分野を複眼的に捉えることの可能性を,存分に生かして下さい。


テーマと向き合い,研究の醍醐味を知る

若山 満大 さん (表現系講座 前期課程2年生)

日本写真史を研究領域にしており,特に大正時代の〈芸術写真〉という潮流について研究しています。大正時代は,およそ誰もが写真を趣味として楽しめるようになった最初の時代でした。アマチュア写真家の裾野が広がる中で,一部の人々から〈写真はただモノを綺麗に写すことに終始せず,自己を表現した芸術であるべきだ〉という考え方が提唱されました。これが〈芸術写真〉という考え方です。大正時代はこの〈芸術写真〉の全盛期であり,芸術としての写真のあり方が模索され,優れた作品が数多く発表されました。私の関心は,〈芸術写真〉をめぐる諸相に出来る限り丹念に光を当てて行くことにあります。史料は未だ散在しており,未知の事柄が多い題材であるからこそ,やりがいも感じ,また知的好奇心をそそられます。未言及の史料を自分の足で探し,人を訪ね,未だ語られぬ物語を紡いでいくことこそ歴史研究の醍醐味であると感じ,日々研究に取り組んでいます。

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<人間環境学専攻>

有機化学+遺伝子工学+未知への好奇心=社会で活躍する物質

原 直己 さん (自然環境論コース 前期課程2年生)

近年の研究によりDNAは遺伝情報を担うだけでなく,触媒能をはじめとした様々な機能を持つことが分かりました。そこで私たちの研究室ではその機能性をより向上させるために,DNAに化学修飾を行った物質の設計と合成を行っています。
その一例として私たちはインフルエンザウイルスの感染を阻害する化合物を作っています。現在抗インフルエンザ薬として使用されているタミフルは,耐性を持つウイルスの出現により,薬が効かなくなる等の問題が生じています。しかし私たちが合成した化合物は,ウイルスがどのように変異しても効果を示すと見込まれています。さらにこれ以外のウイルスや病原菌に関しても,同様の方法で応用可能であると考えています。
人間環境を脅かすウイルスなどをターゲットにし,有機化学と遺伝子工学を組み合わせた研究はこの研究科ならではのテーマだと思います。いつか社会で活躍出来る物質が出来上がる日を目指して,研究に励んでいます。


情報化社会で戦う武器を仲間と共に身に付ける!

東 達也 さん (数理情報環境論コース 前期課程2年生)

情報化社会と呼ばれる昨今の社会情勢を鑑みて,身の回りに溢れる膨大なデータから必要な情報を集約し,適切な判断を行えるようになりたいと考え,数理統計学をより深く学び研究するために進学を決めました。現在取り組んでいる内容は多変量解析です。複数のパラメータを持つデータを統計的に解析し,推定や検定を行っていくための数理的な理論について学んでいます。研究を進めていく途中で難解な問題にぶつかることも多々ありますが,数理統計の理論を学ぶことを通じて,今まで学んできたもののどのように利用していくのか見当もつかなかった抽象的な数学が有機的につながっていく様子を実感できることがモチベーションのひとつになっています。
コースには学年や専門に関係なく,机を並べて切磋琢磨し合い,ときには雑談など楽しい時間を共に過ごすことができる仲間が多くいます。そのような環境でより充実した研究を進めていきたいと考えています。


専門性を磨くと同時に,幅広い分野も柔軟に学びます。

李 夢舒 さん (生活環境論コース 前期課程2年生)

私は日常生活における人間活動の心理面に関して興味を持っており,大学院に進学しました。現在,私はボランティア活動を通し,満足度と自己成長に関する研究に従事しております。また,ボランティア学習・教育がいかに影響を及ぼすのかという視点から,日本社会において,ボランティア活動の意識とあり方を研究しております。その中で,自分の専攻領域への理解を深めると共に,色々な人々と出会い,充実した研究生活を送っております。
大学院における研究は,学部時代と異なり,専攻領域における膨大な先行研究の上に,新たなオリジナリティーを説得的に構築することが重要です。それはもちろん容易なものではありませんが,わずかでも新しい知見に出会うのは何よりの喜びです。
本研究科は生活環境について,専門的授業だけでなく,問題解決の能力を高める実践的授業も用意されています。その学びと経験が就職や今後の研究に大きく生きてくるはずです。


学問の垣根を越えた新しい知の獲得に向けて

上田 隆太郎 さん (社会環境論コース 前期課程2年生)

私は昨年,高知大学から本研究科に進学してきました。高知大学在学中は中国残留邦人問題を社会に伝えるための活動をしていました。活動を進めていく中で,中国残留邦人問題をより専門的に研究したいという思いが芽生え,本研究科への進学を決意しました。現在は本研究科で中国残留邦人問題を研究されている先生の下,日々研究を進めています。
私の研究の目的は,残留邦人の抱える問題の本質を解明し,今後の支援策のあり方について考察することです。そのため高知県の中国残留邦人を対象に,生活史・生活過程・社会関係・社会意識に関する詳細な聞き取り調査を行い,彼・彼女達の抱える問題の本質を分析しています。
本研究科の特徴は,普段から学問の垣根を越えて様々な問題に関心を持つ院生と交流できる点です。このような環境こそ全く新しい知を発見する場になりえます。私も様々な学問から刺激を受けながら,新しい知の獲得に向けて日々研究に励んでいます。


“幅広い視野”と“高い専門性”を持った研究者を目指して

内田 里沙 さん (環境先端科学(連携)講座 後期課程3年生)

本専攻の最大の魅力は,様々な専門家が集結していることです。このことは,幅広い知識を必要とする「環境学」を学ぶ上で,大変恵まれていると言えます。しかも,決して“広く浅く”ではなく,研究者として軸となる高い専門性も身につけることができます。また,本講座では,外部機関との連携を通じて,最前線の研究に携わることができるのも魅力の一つです。
私の研究分野は,「大気化学」といって地球の大気環境を理解する上で重要な学問です。現在は,国立環境研究所(茨城県つくば市)に常駐しながら,植物から放出される有機化合物の対流圏オゾンとの反応メカニズムの解明に取り組んでいます。実験・解析・考察の繰り返しですが,これらの地道な積み重ねが地球規模の大気環境問題の解決に役立つと信じて,毎日楽しく研究しています。このように外部機関で研究するということは,貴重な経験となるので,関心がある人は是非チャレンジしてみて下さい。

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案内パンフレット 『神戸大学発達科学部・神戸大学大学院人間発達環境学研究科2015』 より