心身発達専攻
心理発達基礎論コース (心理発達論教育研究分野) |
こころの問題を「発達」的観点から捉え,主体的に学ぶ 北代 祐 さん(前期課程2年生) 私は「自己評価と学校適応」をテーマに研究しています。学部生の時から学校現場を訪れ,多くの不登校の子どもたちと関わってきました。自信がなく消極的だった不登校の子どもが,関わり合う中で変化していく様子を見て,このテーマをさらに研究したいと思い大学院に進学しました。心理発達基礎論コースでは代表的な発達理論だけでなく,自由度の高いカリキュラムを活かし,臨床心理学や教育・健康といった他分野の授業にも積極的に参加することで幅広い見地を身につけることができます。私自身も様々な考え方に触れることで,子ども観や発達観を広げることができました。また現在,心理発達論コースの補佐員として,学生の相談やサポートを行っています。研究や授業をサポートする側になって改めて気づかされることも多く,学部生と院生が一緒に考えながら,楽しく大学院生活を送っています。 |
臨床心理学コース (心理発達論教育研究分野) |
新しい道へ向かって:夢だった臨床心理士への歩み 岸本 美鶴 さん(前期課程2年生) 私は他大学の英文科を卒業し,数年間公立高校で勤務した後このコースに入学しました。もともと人のこころや対人関係に興味を持っていましたが,高校教員として働く中で再びこの分野を勉強する必要性を感じるようになり,臨床心理士を目指すことにしました。その中で神戸大学の臨床心理学コースを選んだ理由は,人間発達環境学研究科のもとにあり,教育や青年期に関する研究をすることができると考えたからです。人間発達環境学研究科には心理教育相談室があり,学生一人一人がケースを持つことができ,本格的なカウンセリングの実習経験を積むことができます。また,ケースカンファレンスも充実しており,丁寧な指導や助言をしてもらうことができます。コースは全体的に温かく親切な雰囲気があり,先輩や先生方もフレンドリーです。このような恵まれた環境を活かし,私も一つでも多くの知識と経験を積みながら,学び続けたいと思います。 |
健康発達論コース (健康発達論教育研究分野) |
「健康」について幅広く,かつ深く,探求する 鄔 妍 さん(前期課程2年生) 私は,他大学で心理学を専攻し,ストレスについて研究してきました。特に,育児によるストレスが,児童虐待やうつ病などの社会問題や心理的な病を引き起こすことが少なくないということを,卒業研究で報告しました。現代社会において,ストレスは多くの人に関係する深刻な問題です。人は過度のストレスを受けると,過食や飲酒,喫煙のような不健康な行動によってストレスを解消する傾向にあります。そこで,「ストレス」についてさらに深く研究するために,健康科学に関する教育・研究の環境が整っている健康発達論コースに入ることを決めました。現在は,ストレスと食行動の因果関係について,文献を読んだり,実験を行っています。この研究科には様々な分野の研究者が集まっており,分野を超えて多くの先生や先輩からアドバイスをもらって日々研究しています。多くの人に出会い,支えられ,充実感と幸せを感じる毎日です。 |
教育・学習専攻
教育科学論コース (教育科学論教育研究分野) |
アットホームな雰囲気と互いに学び合える環境が魅力 榎 景子 さん(前期課程2年生) 教育科学論コースは,今日の教育が抱える問題や具体的な現象を,歴史的,制度的,方法論的な視点で読み解き,理解を深めることができるコースです。その中で私自身は教育制度論を専攻し,学校と地域が協働しながら子どもを育てていくしくみについて研究しています。研究は地道な作業ではありますが,一つの事をとことん追究する過程には大きな楽しさがあります。また,コースには,他大学,他学部出身の学生や,留学生,社会人経験者も数多く在籍しており,バックグラウンドと専攻する研究領域が異なるメンバーが,ひとつの部屋を共有して研究生活を送っていることも大きな魅力のひとつです。そのため「教育」という共通関心に対し,研究領域や国境を越えた議論や学び合いを日常的に行うことができ,思考の幅を広げたり深めたりすることに恵まれた研究環境にあります。さらに,大学院生同士の仲の良さは抜群で,このアットホームな雰囲気は日々の研究の励みとなっています。 |
子ども発達論コース (子ども発達論教育研究分野) |
人とのつながりを出発点として,日々自らの視野と見識が拡がる場 橋本 夢仁 さん(前期課程2年生) 子ども発達論コースの最大の魅力は,人と人とのつながりをタテ・ヨコに大きく拡げることができる点です。コースの学生はモチベーションが高く,ゼミだけでなく,授業や院生控室において他ゼミの友人や先輩方と交流をし,様々な議論をすることによって,日々多くの見識を得ることができています。また,学会や研究会にも参加することで考えを深めたり新たな観点を得ることができるので,これらは非常に貴重な経験となっています。 私は現在,自閉症児の現実・虚構世界に関する認識の違いを,自閉症児自身の物語の産出・理解の面から見ていきたいと考えています。言葉によるコミュニケーションに困難があるとされている自閉傾向の子どもも,「人とつながりたい」という願いをもっています。そうした願いが子どもたちの語る言葉の中にどのように表されているのかを研究することで,「他者に物語る」ことの意味を考えていきたいと思います。 |
発達支援論コース (発達支援論教育研究分野) |
興味と視野を広げ,自分を成長させてくれる場所 衣笠 梨代 さん(前期課程2年生) 私は学部生の時から親子リズム遊びの活動にスタッフとして参加していたことから,子育て支援に強く興味を持つようになりました。そして研究を深めたいと考え大学院に進学しました。子育て中の親や子どもたち,支援に携わるスタッフとの関わりの中で,現場で感じたことを出発点として,地域における子育て支援のあり方,親子での活動の意義を研究テーマとしています。 発達支援論コースでは,授業以外にも大学のサテライト施設での実践や合宿など,様々な学びの場があります。また大学院には留学生や異なる大学・学部出身の学生,それに社会人の学生も多く在籍しており,様々な研究を行っている人がいるため,授業等においてもいつも新しい視点を得ることができます。物事の捉え方や考え方も,人から影響を受けることが多いこの環境の中で,これからもさらに多くのことを吸収していきたいです。 |
人間行動専攻
身体行動論コース (身体行動論教育研究分野) |
多様な視点から人間の行動を研究する 呂 路 さん(前期課程2年生) 中国のスポーツ大学を卒業した私は,自分のスポーツ経験や大学での勉強を通して,スポーツは勝負だけではなく,スポーツ経験が青少年の心理にも大きな影響を及ぼしていることを痛感しました。大学卒業後もさらに専門的に学びたいと思い,青少年の心理社会的発達や精神的健康に寄与するスポーツの在り方を研究するために,神戸大学に留学しました。本研究科の特徴の一つは先生の専門分野が多岐にわたることだと感じています。様々な授業を受講した今,私が入学当初に構想していた研究計画を振り返ってみると不十分な点が多いことに気づくとともに,多くの新しい構想や考え方が湧いてきました。やはり学ぶ学問領域が広くなるに従って,課題を分析・考察するのに必要な研究能力も高くなるのではないでしょうか。現在,私は中国社会において複雑な問題を抱える青少年の健全な育成のために,スポーツを手段として貢献することを研究の目標にしており,そのためにスポーツ経験が青少年の社会的スキルにどのような影響を与えているのかについて日々研究を重ねています。 |
行動発達論コース (行動発達論教育研究分野) |
プロフェッショナルを生かした学際的研究を目指す 原田 信子 さん(後期課程3年生) 行動発達論コースでは「人間行動」について自分の専門領域を追究するだけにとどまらず,他の分野の学問も学ぶことで新たな発想や手法を身につけることができます。私は理学療法士として医療現場で働いていましたが,現在は加齢に伴う認知機能の低下が高齢者の立位姿勢調整能に変化を与えるメカニズムについて研究を行っています。世界が超高齢社会に向かう中で,高齢者を取り巻く環境や行動はますます多様化しています。このため高齢者を対象とした研究では,自分の専門領域の知識や概念を体系的に整理することに加え,演習や研究発表など討論の場で,社会学や運動生理学など他の分野からの新しい理論や研究手法を知ることが非常に役立っています。大学院では国際学会の発表や欧米誌への投稿も積極的に指導していただいています。また,地域高齢者を対象としたフィールドワークも行っており,社会のニーズを認識し,そのニーズに応えることのできる研究へと発展させたいと考えています。 |
人間表現専攻
表現文化論コース (表現文化論教育研究分野) |
知らないところで,知らない世界に触れる喜びを感じる 汪 鋭 さん(前期課程2年生) 私は中国の大学で主に日本語を学び,もっと日本を身近に理解しようと思い,留学しました。表現文化論コースには,中国の近現代における視覚・物質文化に関する研究を指導していただくにふさわしい先生がいらっしゃるので,ぜひここで留学生活を送りたいと思いました。いま私は,表現文化論コースのデザイン史の研究室に所属し,中国の画報『良友』(1926-45 年)の広告に見られる女たちについて研究をしています。ここでの指導を通じて,自主的に勉強に取り組むことの大切さを知りましたし,修士論文において自分が何をやるべきかがはっきりとわかってきたところです。新しい研究上の観点に立ち,これまでよく知らなかったところ(日本)で,知らない世界(自分の国の歴史や文化)に触れる喜びを,いま強く感じています。 |
コミュニティアートコース (表現創造論教育研究分野) |
自分に挑戦できる。アクティブに動いてフィールドを広げる。 石名 智子 さん(前期課程2年生) コミュニティアートコースでは,理論と実技の両面から身体表現の追究を目指していますが,1 年生では特に実技面に力を注いできました。私は,ベルギーの舞踊学校P. A. R. T. S. の最終選考に残り,現地まで受験に行ったり,「ダンスの時間」という公演に出演し,発達科学部の後輩達と作品を創作・発表しました。また,工学研究科の大学院とも協力し,オーストリアで行われた「アルス・エレクトロニカ」に参加し,最先端技術とアートを融合させ,200 個ものLED を縫い付けた衣装で踊る『LightingChoreographer』というパフォーマンスを披露しました。このようにアクティブにフィールドを広げられたのも,神戸大学が多くの学部・研究科を有する総合大学であるという魅力とともに,先生の大きなサポートであると深く感謝しています。大学院へ進学したからこそ,多くの刺激を受け,成長できているのだと感じています。この1年の経験を活かして,2 年生では修士論文に向け理論と実技を相互にフィードバックさせ,双方の一層の充実を目指しています。 |
人間環境学専攻
自然環境論コース (自然環境論教育研究分野) |
多様な学問分野を追求するユニークな学び舎 尾崎 圭太 さん(前期課程2年生) 私たちの研究科の最も良い点は,多様な学問分野の研究者がいることだと思います。このことに最初は,統一感が無いとか,広く浅い知識の修得しか出来ないのではと考えていました。しかし,その考えは誤りでした。先生はその道のプロばかりで,研究室では深い専門性を修得出来ます。さらに,ここは周りに目をやると全く別の専門性が広がっています。そこに興味が湧いたときに,すっと入り込める環境がこの研究科にはあり,「寄り道」で得た知恵を自分の研究へ還元することが出来ます。こんな研究環境はここしかないと思います。私は天文学分野の一つである,ガンマ線天文学について研究をしています。X線よりも高いエネルギーであるガンマ線を観測することで,超新星残骸など宇宙の極限状態にある星の詳細を知る事が出来ます。私たちの研究分野の競争相手はNASA であり,日々世界の動向を意識しながら研究を進めています。 |
数理情報環境論コース (数理情報環境論教育研究分野) |
「もっと頑張ろう!」成長できる講義と研究環境 渡邊 めぐみ さん(前期課程2年生) 大学院では相対性理論や宇宙論の基礎となる微分幾何学の勉強をしています。学部時代に「トポロジカル宇宙」という本を読み,幾何学に興味を持ったのがきっかけです。現在勉強中ですが,将来的に宇宙空間の幾何学的構造を理解するきっかけになると思うと,ゼミは毎回とても楽しくて充実しています。学部の講義との大きな違いの一つは,大学院生が演習や発表をする時間が多いことです。そのため,予習にはかなり時間がかかりますが,発表が終わった後は達成感があります。また他の大学院生の発表を聞いて,自分と違う考え方や問題の取り組み方に感心したり刺激を受けたりすることが多く,『自分ももっと頑張ろう』と思えます。数理情報環境論コースには現在16名の大学院生がいますが,一人一人が魅力的な人ばかりで,私は日々多くの人から影響を受けています。これからもお互いに刺激しあいながら成長していきたいと思います。 |
生活環境論コース (生活環境論教育研究分野) |
生活に「環境」を呼び込む 石口 勇輝 さん(前期課程2年生) 何かに集中して挑戦しているとき,普段以上の力が出た経験はありませんか。そのときに「何か」を感じませんでしたか。たとえば,環境との「一体感」を。 私は乗馬を対象にして,騎手が環境をどのように捉えているのかをテーマに卒業論文を作成しました。その結果,騎手は1)自分,2)馬,3)自分と馬の関係という3つの事項を段階的に意識することで,多様な情報を乗馬という行為に結びつけていることが分かりました。この3つをつなぐ関係性こそが「環境」なのです。 私たちは自然,社会,情報の間に多様で複雑な関係を作り出しています。そこには数多くの相互関係があり,「環境」という一つのシステムが構築されています。システムが「環境」であるなら,そこには様々な研究の視点が生まれます。そのことをここで学ぶのです。ここで自分に合う「環境」を探してみてください。きっと予想以上のものに出会えます。 |
社会環境論コース (社会環境論教育研究分野) |
多様な人のなかで,「自分」を再発見・再構築する旅 柏原 理絵 さん(前期課程2年生) 社会環境論コースでは,年齢・国籍を越え,様々な人が志高く,日々研究に励んでいます。同じ年齢・同じ国籍の似通った経験を持つ人との交流が中心であった大学生の4 年間とは異なり,ここでは絶えず自分に「ゆらぎ」が与えられます。これまで「普通」と思っていたことも実は「特殊」なことであり,「なぜ」を説明できない体験をくり返すことで,客観的・構造的に考える力が身につきました。私はいま,多民族社会における異文化間での介護について研究しています。類似のテーマを研究する仲間はもちろん,たとえ全く別のテーマであっても,何かしら自分の研究と関わる部分があったり,研究方法や分析の枠組はとてもいい刺激になります。世界に,本当に自分に関係のないことなんてありません。いかに引きよせ,自分が学ぼうとするかだと思います。2年をどう過ごすかは自分次第。そして,それに応えてくれる環境がここには確かにあります。 |
案内パンフレット 『神戸大学発達科学部・神戸大学大学院人間発達環境学研究科2012』 より