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高度教員養成セミナー報告 (第1回~第6回)
第1回 報告
- 題目
- 子どもの心をあらわす言葉:発達研究から教育実践研究へ
- 講演者
- 辻 弘美 (大阪樟蔭女子大学教授)
- 会場
- 発達科学部 高度教員養成プログラム室 F253(F棟2階)
- 日時
- 平成25年5月17日(金)17:00~18:30
- 報告
- 本講演では,「読み」の困難と音韻的意識,心的状態語とこころの理解,保育場面での研究成果の活用について解説された。
1) 「読み」の困難と音韻的意識
読み書きに必要な言葉の力を身につけることが,文字を媒介とした学習の2次的困難を少なくするために重要である。音韻処理スキルは後の語彙獲得に影響しており,さらに日本語の言語構造を考えると意味処理スキルも大切な要素であるといえる。
2) 心的状態語とこころの理解
2歳半から3歳児齢の子どもの心的状態語の獲得が,4歳児齢の子どもの他者の心的理解と関連していることが明らかになった。
3)保育場面での研究成果の活用
心的状態語の獲得の過程を知っておくことで,実際の保育現場において活動を工夫することができる。
- 子どもは,記号としての言葉や発話が現れる以前に,身ぶりや視線を介して他者と意図性を共有しており,大人との日々のコミュニケーションによって他者との関係性を経験的に学んでいる。幼い頃の心的状態語の獲得が,後の心的理解に関連していることや,どの年齢でどういった心的状態語が獲得されるのかといった研究成果を学ぶことが,子どもの発達の過程を意識し,根拠に基づいて保育を実践,計画するために重要であるということを再認識した。例えば,読み聞かせ場面において,絵本の中で心的状態語があまり使われていないとすれば,保育者が意図を持って話を膨らませたり,実経験と結び付けて考えるような援助をしたりすることの必要性を感じた。 (藤掛 絢子)
第2回 報告
- 題目
- 神戸大学サテライト施設が運営する国事業(第2種社会福祉事業)を研究フィールドとしたアクション・リサーチ
- 講演者
- 寺村 ゆかの (神戸大学大学院人間発達環境学研究科・博士課程後期課程)
- 会場
- 発達科学部 高度教員養成プログラム室 F253(F棟2階)
- 日時
- 平成25年6月21日(金)17:00~18:30
- 報告
- 本講演では,神戸大学サテライト施設である「あーち」に関する取り組みや現状,また,そこで取り組まれた研究結果についてお話しいただいた。まず「あーち」に関してでは,どのような経緯で開設に至ったのか,多様なニーズを同時に満たし,そして多様な支援者が活躍できるプラットフォームとして取り組んでいること,利用者の居場所における自由な交流を保障することなどを通して,最終的に「エンパワメント」となるよう取り組みがなされていること等を知った。次に,研究結果の報告では,エンパワメントの観点でペリネイタル・アウトリーチ・サービスに望ましい変容が見られたことや,現在行われている「ビギナーズ交流会」の構想と実践についてお話しいただいた。
この講演を通して,支援の継続・連携の必要性を改めて感じただけでなく,これからの研究の中で自分なりに考えていくきっかけにもなった。 (人間発達専攻 M1 藤原 涼子)
第3回 報告
- 題目
- 理論と実践をつなぐ実証的研究 ―「教科の系統」と「子どもの認識」―
- 講演者
- 坂井 武司 (鳴門教育大学大学院准教授)
- 会場
- 発達科学部 高度教員養成プログラム室 F253(F棟2階)
- 日時
- 平成25年7月19日(金)17:00~18:30
- 報告
- 本講演では,子どもの割合に関する数理構造の理解を促進する教授法としては,関係図を用いた指導及びテープ図を用いた指導が有効であることを実証する過程における,アクションリサーチの実際を中心にご説明いただいた。アクションリサーチによる実証的研究における実証的サイクルの中で,計画段階から適用段階に至るまでに【理論(研究)の場】と【実践の場】との間でどのような行き来が行われているかを詳しくご説明いただいたことで,理論と実践を常に結びつけていくことがいかに大切であるかということ,またそうすることで,研究を常に改善していくことができるということはアクションリサーチの良さの一つであるということを学んだ。特に【理論の場】における計画段階が占める割合は大きく,このことはいかに理論が大切かであるかということを示している。それと同時に,アクションリサーチによる実証的研究は子どもに寄り添った研究であることを感じ,研究者は常に子どもの認識と真摯に向き合うことが大切であることを学んだ。
ディスカッションでは,学生から分析方法など研究内容に関する質問のほか,「修士の研究では【理論(研究)の場】と【実践の場】との間の行き来はどれくらいできるのだろうか」といったアクションリサーチの実際に関する感想が寄せられた。 (人間発達専攻 M1 中橋 葵)
第4回 報告
- 題目
- 教師教育と小学校における運動指導
- 講演者
- 小林 稔 (京都教育大学教育支援センター・准教授)
- 会場
- 発達科学部 高度教員養成プログラム室 F253(F棟2階)
- 日時
- 平成25年10月18日(金)17:00~18:30
- 報告
- 本講演では,講演者の多様な教員経験から,指導の前提および教師に求められる能力,運動指導に限らない小学校段階における指導の留意点を解説いただいた。講演者の教員経験を聴くことによって,国内外の教育環境の違いを知るとともに,教育現場において発生する様々な事件に対して,適切に判断し対応することの重要性を改めて確認することができた。そのためにも,課題解決能力の向上が求められているのである。また,考案した取組みを実行するにあたって,情報や根拠を収集しておくことによって周囲の人を説得することも課題解決能力の一つであり,認識を改めることができた。また,指導の留意点として(1)「あれかこれか」ではない,「あれもこれも」させること,(2)できるだけ「本物」に触れさせること,(3)日常から指導のための前提条件(健康と規律)をきちんとしておくことの3つが挙げられた。児童の運動への興味を引き出すためにも,まずは運動に取り組んでみることが大切であり,それによって運動経験が豊富になっていくことを学んだ。さらに,プロや専門家の熟達した技術をみることによって,その種目に対する一層の興味や感動を得ることができることが考えられた。(人間発達専攻 M1 辰巳 純平)
第5回 報告
- 題目
- ダンス授業における即興的な表現の指導について
- 講演者
- 白井 麻子 (大阪体育大学准教授/舞踊家・振付家)
- 会場
- 発達科学部 身体表現スタジオ F164-1(F棟1階)
- 日時
- 平成25年11月15日(金)17:30~19:00
- 報告
- 本講義では,小学生を対象とした表現運動における即興表現の指導法についての説明をいただいた。教育現場において,表現運動の指導,特に創作を伴うものは,授業がやりにくいとよく言われる。即興的な表現は,瞬間的な発想が求められるため,経験によって内在している動きによって表現されてしまう。ありふれた動きでは,身体で表現することの楽しみは感じられない。自由性が尊重される表現活動において,児童に多様な動きを経験させることが求められている。そこで本講義では,動きの幅を広げるためのアプローチとして「歩く」「跳ぶ」「ねじる」「回る」といった日常的な動作を取り上げ,それらにオリジナリティを含ませることで多様な動きが表現できることを学んだ。
友だちの動きを真似てみたり,題材から連想される「歩く」「跳ぶ」「ねじる」「回る」を創作したり,外からの刺激によって新しい動きは生み出されたり,経験させる。また,互いに表現を鑑賞し合うことで動きを共有し,多様な動きを蓄積することが可能である。
踊ること,表現することに抵抗をもつ児童は多い。そのような児童が楽しめる授業を行うためには,本講義で体験したような工夫された教材開発や,児童の成長を見逃さず褒めることが重要であることを再確認することができた。(人間発達専攻 M1 萩原 大河)
第6回 報告
- 題目
- 教育実践を対象とした研究方法論:アイデアを授業にして検証するために
- 講演者
- 村山 功(静岡大学大学院教育学研究科教授)
- 会場
- 発達科学部 高度教員養成プログラム室 F253(F棟2階)
- 日時
- 平成26年1月8日(水)17:00~18:30
- 報告
- セミナー内容
本講演では,教育実践研究を行う上での留意点についてアイデアを授業にするところから実践し,評価するまでの流れに沿って解説いただいた。
- アイデアを授業にする
アイデアを検証するためには,教育方法のレパートリーが反映された授業計画を行い,教師の力量が反映された実践を行う必要がある。アイデアを検証するためには,それ以外の部分は適切でなければならないので,チームで研究するという選択肢もある。
- 仮説を検証する
仮説検証の基本形は要因統制であるが,教育実践研究の難点として,要因統制が困難なことが挙げられる。しかし,統制群が作れないときでも,仮説の検証は可能である。
- データをとる
データを収集する際の原則は,「分析対象を可視化すること」であり,学習活動と連動したデータとプロセスデータがある。
- セミナーの考察
教育実践研究では,どのようなアイデアを中心としているのか,どのような方法で仮説を検証していくのか,そのためには,どのようなデータが必要なのであるか,を常に意識しなければならない。これらを自らの研究にあてはめて明確にすることで,自らの研究における留意点を再認識し,意識づけることができた。今後,研究を進めていく中で,意識すべき点を考えながら,実践研究を行っていきたいと思う。(人間発達専攻 M1 山橋知香)
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