自分の興味を探る研究ができる場所
中井 由貴子 さん (こころ系講座 前期課程2年生)
私は,自己のイメージと他者の目に映る自分の姿の違いに興味を持ち,研究をしています。友人や家族など大切な人の目に映る自分と自分自身が抱く自分のイメージのズレを感じた時,人はどんな気持ちになり,どんな行動をとるのだろうという関心からこの研究を始めました。実際に研究を行うと,他者からどう思われているのかを尋ねる方法に課題や限界もあるなど大変なこともありますが,自己イメージと他者の目に映る自分の姿との違いについて,少しでも明らかにできればと思い研究に取り組んでいます。
授業などでは自分の研究とは異なる分野を研究している人たちと話をする機会もあり,今までの私の視点だけでは気づけなかった新しい考えに触れることができ,新たな視点から自分の研究を捉え直すこともできます。この研究科で出会えた人たちに,たくさんのことを教わり,いつも感謝しています。これからもたくさんの人に支えられながら,研究を頑張りたいです。
「語ること」と「聴くこと」で紡ぐ物語
こころ系講座 前期課程2年生
私は,同じ悩みや問題を抱える人々が集まる「自助グループ」に関心をもっています。私の研究テーマは,自助グループの場で「語ること」と「聴くこと」がその当事者にどのような意味をもたらすのかということです。自助グループには「言いっぱなし聴きっぱなし」というルールがあり,一人が話している間は誰も口を挟むことはなく,じっとその人の語りに耳を傾けます。じっくりと話を聴いてもらえるという体験は,語る側にどのような影響をもたらすのか。また,聴く側の体験とは一体どのようなものなのか。自らもその場に身を置きながら,語るということ,聴くということをあらためて考えてみたいと思っています。
現在は大学院での授業に加え,学校や病院,施設などさまざまな領域での実習を通して,貴重な経験を積んでいる毎日です。研究と実践のどちらも充実している恵まれた環境に感謝し,これからも仲間と切磋琢磨しながら,日々を過ごしていきたいです。
アットホームな雰囲気は,私にとって本当に宝物です。
劉 力瑋 さん (こころ系講座 前期課程2年生)
私は中国からの留学生です。中国の大学で,教育についての知識を少し身に付けました。入学してからは,川畑先生の下で,健康教育,行動科学を学んでいます。授業を通じて最新の知見に出合いながら,研究テーマをとことん掘り下げていく過程には,他では得がたい喜びがありました。私の研究テーマは「中国中学生の喫煙及びその関連要因について」です。喫煙に関する研究は山ほどありますが,中国では,特に中学生において,喫煙と心理社会的要因との関係についての研究は,まだまだ少ないという現状があります。その関連要因を明らかにすることによって,喫煙防止教育に科学的な根拠を提供していきたいと思います。
川畑研究室では,先生も先輩も,研究のことにしろ,生活のことにしろ,やさしく教えて下さいます。何があっても,日々,前向きに一歩一歩踏み出すことが重要だとわかりました。こういうアットホームな雰囲気は,留学生の私にとって本当に宝物です。
穏やかな日々のなかで,教育へのまなざしを養う
惟任 泰裕 さん (学び系講座 前期課程2年生)
教育科学論コースでは,歴史・制度・方法などの観点から教育について学ぶことができます。先生方は丁寧にご指導をしてくださり,図書館等の設備も充実していて,非常に恵まれた環境です。目標も背景もさまざまな学生が在籍し,学生同士とても仲が良く,穏やかに日々を送りながら勉強に励んでいます。その中で私は英語教育史を研究しています。岡倉由三郎や福原麟太郎など,英語教育に深く関わった人物の著作を読んだり,明治以降の英語教員養成の歴史を調べたりするなかで,「なぜ英語を学ばないといけないのか。」「日本人の英語が下手と言われる理由は何か。」といった疑問の答えを探求することはとても楽しいです。私は船寄先生の研究室に所属していますが,先生は「教育の未来を見通すために,歴史観を磨きなさい」とよく仰います。私も日本の教育に少しでも貢献できるよう,現代的な課題意識を持って,地に足のついた研究を着実に進めたいと思っています。
子どもたちが心身ともに健康に育つことを願って
中橋 葵 さん(学び系講座 前期課程2年生)
私は幼児の数概念の発達に関する研究を行っています。みなさんの多くは「幼児」「数」というキーワードから,おにごっこやお風呂で数を数えるのを思い浮かべるのではないでしょうか。このような日常生活の何気ない行為も,数概念を大いに反映した行為であるといえます。また,幼児期に発達した数概念は就学後の学習の基盤にもなります。
こうした観点から,私は幼児の数概念の発達の重要性を感じ,研究を始めたわけですが,より深い部分で私の研究を支えているのは,子どもたちに心身ともに健康に育ってほしいという願いです。その実現のため,研究で明らかになったことを現場の先生方にわかりやすく伝え,どのように支援していくかを一緒に考えていきたいと思っています。今の私ではとても力不足ですが,子どもが大好きで,教育に対する情熱に溢れた本研究科の仲間や先生方のもと,子どもたちが心身ともに健康に育つ未来に向けて,学んでいきたいと思います。
当たり前が当たり前ではない
青 格尓 さん (学び系講座 前期課程2年生)
私は中国の内モンゴルから来た留学生です。私は,中国の大学で人的資源管理専門を卒業し,その中で特に企業内人材育成に興味を持っていました。そのため,成人教育に興味を持ち発達支援論コースに研究生として入学しました。しかし,発達支援論コースに入学してから,私は今まで当たり前だと思っていた様々なことは当たり前でないことに気づかされ,「ショック」を受けました。例えば,「~だから~べき」や「~らしさ」のような日々当たり前に口にすることばは,実はその時の社会の潮流に形づくられたものだということです。このような「ショック」のお陰で,私は自分自身の出自に目を向けるようになり,修士論文のテーマを多文化教育に一変しました。
発達支援論コースは私のような留学生や社会人等の多様な背景を持つ人が集まり,また様々な分野の研究ができる「多様性」と「自由」の特徴があります。また,フィールドに出かけたり,ボランティア活動に参加したりする中で人との「出会い」のチャンスが多く,人と人との関係性のなかで大事な視点が得られます。こういった視点が,将来にもつながる大事な視点になると思われます。
スポーツを核とした人々の結びつきが生み出す力
稲葉 慎太郎 さん(人間行動専攻† 後期課程3年生)
現代社会のスポーツを取り巻く環境は,トップスポーツから市民スポーツまで実に様々です。私は,スポーツ社会学を専攻しており,特に,“生涯スポーツ”を実現するべく育成が進んでいる総合型地域スポーツクラブを焦点に当てて研究をしています。このクラブでは,スポーツをする人はもちろんですが,子どもの試合を応援する人,指導者や事務局として日々の活動をささえる人,さらに,クラブへの協賛などで応援している地元の商店や地域団体など様々な人々が関わっています。このようなスポーツ現場を中心とした地域社会との多様な結びつきが,活動をより豊かなものにしていくといわれています。私は研究を通して,スポーツに様々な人が関わることによって生み出されるソーシャル・キャピタル(社会関係資本)について探求し,実際に活動現場に好影響をもたらすことを実証することで,より豊かな地域スポーツのネットワーク形成に貢献できればと考えています。
広い視野で「ヒト」を見る
国宗 翔 さん (からだ系講座 前期課程2年生)
今日,世界中で高齢化が進行しており,「高齢者の転倒」が注目されています。私は理学療法士として医療現場で働いていますが,高齢者の活動や周囲の環境は多様化してきていることに加え,転倒する要因は様々であり,一つの側面からでは実態を十分に理解できません。このため転倒への対策や予防を目的とした研究は,自身の専門分野だけでなく広い視野を持つことが必要だと考えています。本研究科では,多様な研究が行われており,異なった視点を持つ人と意見交換をする機会が多く,今までの価値観が覆るような発見をすることもあります。私自身は障害物跨ぎ歩行における高齢者の特性を研究していますが,あらゆる観点の考え方に触れることができ,非常に充実した大学院生活を送っています。また,様々な領域に興味を持てることも本研究科の魅力の一つであり,研究を発展させてくれることはもちろんですが,人間として成長させてくれる環境であるとも思います。
自由な環境で,好きなことを思いっきりたのしむ!
井上 いぶき さん (表現系講座 前期課程2年生)
私は本研究科で,ピアノ演奏における楽器と奏者の相互コミュニケーションについて研究を進めています。これまで演奏の楽しさにのめり込んで来ましたが,その中でピアノ1台1台が持つ個性に驚いた経験をきっかけに,発達科学部で日本のピアノ製作の歴史と実情についても研究し,卒業論文にまとめました。そして,“ピアノという楽器の魅力”について更に探求しようと,大学院に進学しました。
私の場合,この研究を進めることは,ピアノを演奏することと密接な関係にあります。楽器のことをより深く理解し,楽器と奏者との関係について考察することは,自身の演奏を今までとは違った方向から見つめ直すことにも繋がるからです。このように理論と実践を両輪とした研究ができるのは,学際的で自由度の高い研究環境ならではのことと感じています。
みなさんも是非こちらに進学し,自身の専門分野を複眼的に捉えることの可能性を,存分に生かして下さい。
テーマと向き合い,研究の醍醐味を知る
若山 満大 さん (表現系講座 前期課程2年生)
日本写真史を研究領域にしており,特に大正時代の〈芸術写真〉という潮流について研究しています。大正時代は,およそ誰もが写真を趣味として楽しめるようになった最初の時代でした。アマチュア写真家の裾野が広がる中で,一部の人々から〈写真はただモノを綺麗に写すことに終始せず,自己を表現した芸術であるべきだ〉という考え方が提唱されました。これが〈芸術写真〉という考え方です。大正時代はこの〈芸術写真〉の全盛期であり,芸術としての写真のあり方が模索され,優れた作品が数多く発表されました。私の関心は,〈芸術写真〉をめぐる諸相に出来る限り丹念に光を当てて行くことにあります。史料は未だ散在しており,未知の事柄が多い題材であるからこそ,やりがいも感じ,また知的好奇心をそそられます。未言及の史料を自分の足で探し,人を訪ね,未だ語られぬ物語を紡いでいくことこそ歴史研究の醍醐味であると感じ,日々研究に取り組んでいます。
案内パンフレット 『神戸大学発達科学部・神戸大学大学院人間発達環境学研究科2015』 より
† 人間発達環境学研究科は2013年4月に4専攻(心身発達専攻,教育・学習専攻,人間行動専攻,人間表現専攻)を改組し,人間発達専攻を設置しました。
2013年度までの「大学院生の声」は,以下をご覧ください。
- 心身発達専攻
- 教育・学習専攻
- 人間行動専攻
- 人間表現専攻