日本と中国における人物画テストの特徴の差-発達障害の観点から-
李 莉 さん (こころ系講座 前期課程2年生)
子どもの心理検査法の一つである人物画テストについて,研究を行っています。
人物画テストは実施が容易なので,日本では様々な発達障害に気づくための指標としても用いられることがあります。そこで,発達障害児に対する支援の意識が薄い中国において,日常生活や学習面などで困難を持つ子どものスクリーニング手段として,人物画テストの可能性を検討したいと考えています。
時代に伴う環境の変化に従って,人物画テストの結果が変わってきていることが日本の先行研究で明らかになっています。現在私は,人物画テストを用いて日本と中国の結果を比較し,相違点を明らかにし,その影響要因について文化・生活といった背景に注目しながら検討しています。
授業やゼミでは,ディスカッションが活発に行われ,他の学生の意見を聞くこともできるため,自分の考えをより深めることができます。コースの皆さんは親切でいろいろなことを教えてくれるので,楽しく充実した留学生活を送っています。
実践と研究を広く深く学べる場
篠原 有希 さん (こころ系講座 前期課程2年生)
私は元々,発達障害のある方々の心や対人関係について関心があり,発達的な視点からも研究や実践が展開されていることで有名な神戸大学の臨床心理学コースに進学しました。本研究科には,発達障害を専門とされている先生がおられ,他大学ではあまり見られない発達障害に特化した授業を受けることができます。また,臨床心理学コースには,心理教育相談室があり,先生方の丁寧なスーパーバイズを受けながら実践に臨むことができます。コース内の雰囲気はとても良く,和やかであり,先生方や先輩と親しみやすいのも魅力です。
私の研究は,「自閉症の方々がどのような顔を好むのか」についてです。具体的には,顔写真を女性的・男性的あるいは成熟的・幼若的なものへと変化させることのできるアプリを利用し,参加者の好みの顔にご自身で調整してもらうという実験課題を通して検討しています。自閉症の方々は顔に興味がないと一般的に言われています。しかし,本当はそうではなく,彼らの興味の幅の狭さが背景にあるだけではないかという問題意識を持っています。どのような研究結果が出るか,日々ワクワクしながら研究を進めています。
優れた指導者との出会いにより開かれた,世界に通用する研究者への道
小原 久未子さん (心身発達専攻† 後期課程3年生)
私が所属する中村晴信研究室では,食事と健康に関する研究をメインテーマにしています。その中で,私は女性に着目し,月経周期や月経に関連した症状と生活,食事に関する研究を疫学・実験の双方から検討しています。月経周期に伴って現れる症状は,女性にとって生活の質にも影響する重要な健康問題であるため,学部生の頃から継続的に研究しています。
私は将来,このまま研究職に就く予定ですが,そのためには世界の研究者に求められるような研究を継続することが重要になってきます。また,その際に適切な指導を受けられる指導教員に出会うことも大切だと思います。博士課程における研究がヨーロッパの雑誌に掲載されたり,日本学術振興会特別研究員(DC1)に採用されたりした時は,自分のこれまでの努力が認められたのだと思え,さらに研究を続けていく思いが強くなりました。これからも世界に通用する研究成果を出せるよう,精進する日々を歩んでいます。
関係性のなかで育つ「自己」,そして「研究への姿勢」
太田 知実 さん (学び系講座 前期課程2年生)
私は,教育制度論研究室に所属しており,青年の「自己形成」という視点から教育について考えています。理想論を語るだけで終わらず,現実に制度が運用される状況を客観視し,冷静に分析することが求められます。
また,私の所属する研究室では,先生や博士課程後期課程の先輩方と共同研究を進める場,「研究会」が設けられています。今年は,「新人教員支援」について研究しており,インタビュー調査も実施しました。あるテーマについて,一緒に研究を進めるなかで,先生や先輩方の「研究への姿勢」を身をもって学ばせていただいています。
教育科学論コースは,とてもアットホームな雰囲気です。先生方との距離が近く,学生同士の仲も良いので,充実した日々を送ることができています。
師によれば,学問とは「自他ともに,意味のあるディスコース(言説)を生み出すこと」。これからも,周りの人を大切にしながら,研究生活を邁進してゆきたいです。
歴史の中に隠れている人間の知恵を見つける
木村 あかね さん (学び系講座 前期課程2年生)
私は現在,表現教育に関する研究をしていますが,先生の勧めでハンザ同盟に関する文献も読んでいます。初めは,表現教育とハンザ同盟がどう関係するのか分かりませんでしたが,「人間の知恵」がそれらを築いてきたという重要な共通点があることに気づきました。他方現代の表現教育は,表現教育に関わる人々が,その時代が抱えた課題を乗り越えようと試行錯誤する中で作り上げられてきました。また,ハンザ同盟は巨大な都市連合体として知られていますが,ハンザが強力な都市連合になる前の主役は都市ではなくて商人たちであって,彼らが商業圏を広げようとして結束を固めて行く中でハンザが形成されました。
人々がより理想的なものを作ろうとしてどのような知恵をもって行なってきたのか,それを発見する時,私は人間の持っている潜在能力の大きさに驚かされます。過去の歴史から人間の知恵を発掘しながら,これからの日本に役立つ研究をしていきたいです。
実践に結びついた研究の楽しさ
盛 敏 さん (教育・学習専攻† 後期課程3年生)
自閉症児の社会性の発達において,異文化をもつ支援者が関わる意味について研究しています。私は日本に来てから自閉症児支援の現場で活動に参加するようになったのですが,最初は外国人である私に何ができるのだろうかと戸惑いを感じていました。しかし,自閉症の子どもとの関わりを深めるにつれ,中国文化を背景にもつ私の立ち位置と日本社会における自閉症の立ち位置との類似性に気づきました。私が大事にしている価値と研究を結びつけることができ,幸せを感じることができました。
もともと私は,現場に足を運んで自分の肌で感じることが大好きです。ですから,私にとっての研究の魅力は,現場で自分が感じた驚きと疑問をベースにして,先行文献や勉強会や発表会などを通して自分なりの答えを導き出すところにあります。ときどき自分の能力の限界を感じることがありますが,いろんな人の力を借りて苦しさを乗り越えた後の喜びは大きいものです。
すべての人がスポーツのやりがいを感じられる社会を目指して
高松 祥平さん (人間行動専攻† 後期課程2年生)
私が所属する生涯スポーツ研究室では,毎年,神戸マラソンのランナー調査やツール・ド・おきなわの参加者・観戦者調査を行っています。また,調査を行うだ
けでなく,自らマラソンやサイクリングに挑戦し,生涯スポーツを実践しています。
私の研究テーマは,スポーツ指導者のコンピテンシーです。コンピテンシーとは「効果的あるいは優れた成果と関連する個人の基本的な特性」と定義されます。この概念を用いて,平成26年度においては高校野球の監督のコンピテンシーが,選手の動機づけにどのような影響を及ぼすのかを研究しています。今日,勝利至上主義,苦役主義から生まれるスポーツ指導者の様々な問題が明るみになっています。それが原因でスポーツから離れる選手がいることは残念なことです。すべてのスポーツ指導者と選手が互いに成長し,スポーツのよさを実感できる指導者育成システムの確立に向けて,一つ一つ研究を積み重ねていきたいと思っています。
研究を通して自分が成長できる環境
白本 愛 さん (からだ系講座 前期課程2年生)
私は学部時代に水泳をしており,水泳時の生体反応やパフォーマンスとの関係に興味を持っていました。水泳を含む多くのスポーツは,一般的に全身を使って行いますが,運動中の生体反応を観察した先行研究では自転車運動(主に脚のみの運動)が用いられてきました。そこで私は現在,上肢,下肢の両方を用いた全身運動中の生体反応について体温調節システム(主に発汗や皮膚血流反応)を中心に研究しています。研究を進める上で重要な実験環境や,疑問があればすぐに質問できる環境が整っていることは本研究科の魅力の一つだと思います。私の目標は,自分の研究を海外の雑誌に投稿することです。簡単なことではありませんが,またとない機会なので挑戦したいと思っています。
本研究科には様々なことに挑戦する機会があります。積極的な姿勢で取り組めば,サポートしてくださる先生方もいます。ぜひこのコースで,一緒に充実した大学院生活を送りましょう!
制作を通して,作品研究の手がかりを得る
田中 美佳 さん (人間表現専攻† 後期課程3年生)
私は,以前より美術教育の範疇外にある作品に関心があり,それらの独創性についてより深く理解したいと考え,大学院に進学しました。現在は岸本吉弘先生のもとで,近年国内においても認知度が高い「アール・ブリュット」という美術教育を受けていない人々が描く作品の創造性をテーマに,自身の制作を進めながら,作品研究を主体として論文の執筆に取り組んでいます。
関連資料を読み込むことや研究対象となる作品を鑑賞すること以外に,実際に制作ができる環境にあることは,作品における素材やモチーフ,画面構成やテーマについて再考することにもつながり,研究に欠かせない方法のひとつです。また,自身の制作においても手法を再認識する機会につながっています。両者を並行して進めることは大変ではありますが,博士後期課程であるからこそ,時間をかけてできる研究だと思っています。
実践と理論の両面から,人の交流と芸術の可能性を考える
内林 加奈 さん (表現系講座 前期課程2年生)
私は幼少期にピアノを始め,大学では学科における実習,研究会,インターンシップなどを通じて,出演者としてのみならず企画・構成の立場も経験してきました。こうした経験から,芸術を通した人びとの交流を探求したいと考えて大学院に進学しました。
舞台公演というと着飾って行くようなものを連想しがちですが,実際には気軽に立ち寄れるものも多くあります。そのようななかで,私が注目しているのは「地域芸術祭」です。これは参加時の敷居が低く,人びとの交流の機会として大きな可能性を感じます。その可能性を,理論と実践の両面から検討することが,私の研究テーマです。
課外活動では,学部の英会話ルームに継続して通い国際交流と英語学習を行っています。夏休みには海外インターンシップとして,文化紹介イベントの企画・運営の研修にも参加しました。研究をはじめ様々な活動を通して出会う人びとから日々たくさんの刺激を受け,学んでいます。
案内パンフレット 『神戸大学発達科学部・神戸大学大学院人間発達環境学研究科2016』 より
† 人間発達環境学研究科は2013年4月に4専攻(心身発達専攻,教育・学習専攻,人間行動専攻,人間表現専攻)を改組し,人間発達専攻を設置しました。
2013年度までの「大学院生の声」は,以下をご覧ください。
- 心身発達専攻
- 教育・学習専攻
- 人間行動専攻
- 人間表現専攻