平成27年12月13日(日),神戸大学発達科学部大会議室にてアカデミックサロンを開催しました。今回は「ニュートリノ振動について-ニュートリノとはなにか?ニュートリノ振動とは何か?」という内容で,神戸大学大学院人間発達環境学研究科の青木茂樹教授にお話しをしていただきました。東京大学の梶田隆章教授がニュートリノ振動の研究で今年のノーベル物理学賞を受賞したということで,12月10日の授賞式に合わせて新聞やテレビ番組などで何度も特集を組まれていたことということもあり,6歳から90歳まで幅広い年齢の方が60名(男性40名,女性20名)参加されました。
極めて小さな粒子であるニュートリノの観測に巨大な観測装置が必要となる理由や,「ニュートリノ振動」の発見にいたるまでは,1964年のデービスの「太陽ニュートリノの問題」から始まり,2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊氏らの研究を経て,ようや梶田氏の「ニュートリノ振動」に辿り着いたというニュートリノに関する歴史などを,専門知識を取り入れつつも,わかりやすく丁寧にお話ししてくださいました。また,ニュートリノをはじめとする素粒子物理学の分野は,世界の中での日本がリードしていることなどもお話しされました。
質疑応答では,「ニュートリノが私達の生活にどのように生かされているのか」という質問が出されました。青木先生によりますと,ニュートリノ自体が私達の生活に活かされるようになるのはだいぶ先のことですが,すでに素粒子実験で培われた技術が,癌検査などで使用されるPET(陽電子放射断層撮影)に転用されています。また,宇宙線により大気中でニュートリノと一緒に発生しているμ粒子はX線などに較べて強い透過力を持ち,それを活かして原子炉内部の透視などが実際に行われています。参加者の皆さんは,時折メモを取りながら熱心に聞いておられました。科学の最先端の話題に触れることができるとても貴重な時間となりました。
今後も定期的にこのような学術的な内容のアカデミックサロンも開催していく予定です。